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首都移転には、多大な労力が必要だ。政府機能は再編成されなければならず、新しい行政の中心地ではやらなければならないことも山積みになる。しかしそれでも、壊滅的な環境変化に直面している首都にとっては、それが唯一の選択肢なのである。
悲しいことに、これはインドネシアでまさに起こっていることだ。同国大統領のジョコ・ウィドドは2019年、海面上昇と建物倒壊の危険性を懸念して、首都をジャカルタから、ジャワ島の北に位置するカリマンタン島(ボルネオ島)の東カリマンタン州に、移転する計画を公表。
2022年1月中旬、その計画が国会で承認され、新都市の名称が「ヌサンタラ(Nusantara、「群島」の意)」となることが発表された。新首都は、2024年の移転着手を目指して建設される。
ジャカルタは何十年も前から洪水が頻発することで有名で、文字通り「沈没」の過程にあるといえる。極めて湿潤な土地に建設されたこの都市に流れる川は、13本。その下にある地下水は常にくみ上げられ、その結果、地盤が沈下した。街の一部は年間25センチメートルも沈み、海面よりもはるかに低くなっているという。当然、建物への影響も大きい。
ヌサンタラは洪水に強く、住民の生活を危険にさらすことがないように建設される。また、首都をこのエリアへ移すことで、国全体の富の再分配にもつながることが期待されている。社会的なメリットがある一方で、環境保護主義者たちからは、オランウータン、マレーグマ、テングザルなどの絶滅危惧種に害を及ぼす恐れがあると、この計画を批判する声も上がっている。
こうした議論はまだ続くと見込まれるが、ヌサンタラの建設工事は2022年中に始まる予定だ。首都移転が成功するかどうか、見守っていきたい。
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