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江戸時代中期に麻織物「奈良晒」の問屋として創業した中川政七商店が同社初の複合商業施設、鹿猿狐ビルヂングが、2021年4月14日(水)に開業する。
中川政七商店の「シカ」、猿田彦珈琲の「サル」、㐂つね(きつね)の「キツネ」が3匹が集うことから建物を、鹿猿狐ビルヂングと命づけ、「路地を巡り出会う、触れ、学び、味わう奈良」をテーマにさまざまな情報を発信する場所を目指す。
約126坪の3階建ての施設を設計したのは内藤廣。開放的なガラス窓と瓦屋根が特徴だ。中央は中庭とそこにつながる路地があり、ならまちの歴史ある風景になじんでいる。この歴史とモダンの調和こそ、この施設の意義だろう。
築100年以上の町家の貯蔵庫を改装した「時藏」や「布蔵」などの中川政七商店のアーカイブを展示し、麻織物「奈良晒」の問屋として商いを続けてきた歴史も学べる。
手績み、手織りの麻はがきを作るワークショップなど、体験型コンテンツも多く、奈良の工芸文化を体感できるのも魅力の一つ。
施設内には、ミシュラン一つ星掲載店による初のすき焼き店、㐂つねが出店するなど、食の分野でも注目を浴びている。弁当などのテイクアウトも充実させ、観光客のみならず、地元の人々がランチとして気軽に楽しめるようにした。
3階にはコワーキングスペース、ジリン(JIRIN)が入居。名称の由来は、仏教における大地を支える三輪の一つであり、五重塔や石灯篭を支える土台の名称である地輪から。また辞書、辞林ともかけ、学びを通じてまちづくりの礎となり、新しい時代の明かりを奈良にともしたいという願いを込めている。
衰退しつつある工芸を応援し、奈良に魅力的なスモールビジネスを生み出す『N.PARK PROJECT』の拠点としても機能する。すでに2020年にオープンした菩薩咖喱、6代続く吉野の柿農家、堀内果実園などの事例もあり、奈良のまちを活性化するスモールビジネスを今後もサポートしていくという。
古くて、斬新な、生活に根付いた奈良の文化を広げていく、新施設の誕生が楽しみだ。
テキスト:間庭典子
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