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日本だけでも累計700万部を超す世界的ベストセラーの児童文学「エルマーのぼうけん」シリーズ。1948年から1951年に書き上げられた同作、意外なことに大規模な展覧会を開くのは今回が初の試みとなる。
立川市の「PLAY! MUSEUM」で、2023年7月15日(土)〜10月1日(日)に「エルマーのぼうけん」展が開催。絵本の中の世界を立体的に表現した展示空間をはじめ、ジャングルで鳴り響く音や、嵐を光で再現し、まるで自分が冒険しているかのように展示を五感で楽しめる。慣れ親しんだ絵本の世界へ、いざ出かけよう。
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同展では、作画を担当したルース・C・ガネットの手による約130点近い美しい絵本の原画が展示されているほか、作者であるルース・S・ガネットの親族から借用した、絵本が生まれるまでの「りゅう」の人形といった資料を見ることができる。まさにエルマーのぼうけんのオリジナルが一堂に会した、またとない機会といえるだろう。
美しい原画に息を飲む
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エントランスを抜けると、シリーズ第1作の「エルマーのぼうけん」の冒頭シーンであるジャングルの再現から始まる。動物たちが襲いかかってきそうな大迫力のパネルに囲まれつつ道を進む。まるで自分が難局を切り抜けるエルマーになったような気分だ。元の原画も展示されており、見比べてみてもいいだろう。息を飲むような繊細な絵に驚くに違いない。
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エルマーを食べようとする多数の「わに」は、踏める立体作品。おそるおそる踏んでみよう。実は一匹一匹踏んだ時の音が違うのである。
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歩みを進め、嵐の様な光と音のトンネルを抜けると、第2作に入る。カナリアの王国を訪れる「エルマーとりゅう」の世界だ。ここでも壁には原画が整然と並べられている。主人公たちの活躍や、楽しそうに踊るカナリアたちの絵をじっくりと鑑賞しよう。
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いよいよ第3作、とらわれたりゅうの家族を救いに行く「エルマーと16匹のりゅう」の登場だ。まず「エルマーとりゅう」の世界の地図を再現した空間が視界に広がる。大きな山の絵をバックに、家々のミニチュアが並んだ空間にいると、まるでりゅうに乗って飛んでいるかのような気分になれるのだ。
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りゅうたちのパーティーに参加する
地図の原画を鑑賞しつつ、足を進めると、七色に照らし出された光の中で、多数のりゅうたちがDJパーティーをしている様な歓喜に満ちた空間が現れる。ここは、エルマーが一計を案じ、おもちゃの鉄砲を鳴らして合図をすると、とらわれたりゅうたちがラッパや笛を鳴らしながら逃げ出すシーンを表現しているという。
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中央にあるDJブースのようなマシンは、オーディオテクニカのサポートによって実現した「音を感じる展覧会」の仕掛けの一つ。実際に触ることができ、光り輝くボタンを押すと、ラッパや笛といった楽器の音が鳴る。まるで自分がこのどんちゃん騒ぎに参加したような気分になれるのだ。
さらに、ボタンをある条件で押すと、レコードプレーヤーが動き出し、ジャズミュージシャンのオーネット・コールマンによる軽快なフリージャズが流れ出す。光り輝く空間で思う存分楽器を鳴らせる体験は、誰しも夢中になってしまうに違いない。
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3作の展示の後は「エルマーとりゅう」が絵本として誕生するまでの歴史を紹介。絵本の挿絵を描いてもらうために、ルースが作成したりゅうのぬいぐるみは見逃せない。
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挿絵と言葉のレイアウトを調整するために試行錯誤した痕跡を示すダミーブックやルースの個人的な品々も展示。作品化までのバックグラウンドを知ることができる。
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このほか、各界で活躍する100人が冒険の書を推薦した「ぼうけん図書館」を開設。冒険に関する絵本を読みたい、知りたい人にはうってつけだ。
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冒険のともであるキャンディや歯ブラシのほか、ぬいぐるみといったグッズも展開。併設されたカフェには、作品にちなんだオリジナルフードが多数提供されている。鑑賞後に味わえば展示の思い出をより深いものにできるだろう。
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同展の開催に貢献した翻訳家であり、ルースの評伝を執筆した前沢明枝は「これほど大規模な展覧会は誕生日パーティーのよう」とコメント。めでたいことに、ルースは今年でちょうど100歳を迎えるという。慣れ親しんだ名作の晴れ舞台を、ぜひ体験してみてほしい。
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