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アルゴリズムを駆使したジェネラティブアートで世界的に有名なアーティスト、タイラー・ホッブス(Tyler Hobbs)がこのほど来日。 虎ノ門エリアの新虎通りに面したビルに、新作のミューラルアート(壁画)を制作した。 タイラーは、完成披露に際した発表会で、作品のテーマや、過去最大サイズの作品に取り組んでみての感想などについて、個別のインタビューに応じてくれた。
「ほこみち」のにぎわい創出にジェネラティブアートの注目作家を起用
新橋~虎ノ門エリアのメインストリートである新虎通りは2023年3月17日、都内初の「歩行者利便増進道路(ほこみち)」に指定された。これによって道路法の特例を活用し、広告の設置のほか、歩道にテーブルと椅子を並べて飲食店やショップを展開、各種イベントの開催も可能となり、さらなるにぎわいが期待されている。
そんなエリアをさらに盛り上げようとスタートした「ミューラルアートプロジェクト」は、通りに面したビルの壁面をキャンバスに、巨大なミューラルアートを描くプロジェクトだ。森ビルが主催し、TOKYO MURAL PROJECTチームによって運営されており、今回はアメリカ、テキサス出身のビジュアルアーティスト、ホッブスに制作を依頼した。
彼は計算された美学や自然界との関係や相互作用などをテーマにしながら、アルゴリズム、プロッター、ペイントを用いて、抽象的な作品を手がけている。現在までに1000点を超える作品が、平均10万ドル(約1,334万6,950円)で販売され、世界中にコレクターがいることでも知られる、注目のアーティストだ。
ホッブスへの制作依頼は2022年1月ごろ。「東京という素晴らしい場所で作品を描けることが非常にうれしかった。とてもいい建物だし、周囲に邪魔になるものもない。ここにどんな作品が合うだろう、と考えている時間も楽しかった」。 かつて来日した際は、コンピューターサイエンスに関する論文発表のために岩手県盛岡市を訪問していたという。当時、アート作品の制作は趣味で楽しんでいたため、今回「アーティストとして来日できたことが本当にうれしい」とも語ってくれた。
アルゴリズムの規則性とアナログの偶然性をミックス
海外から日本国内への入国規制があったため、作品の構想は提供された現場の写真や、Googleマップのストリートビューを活用。アルゴリズムの特別バーションを用いて、少しずつコードをアップデートさせながら、色や形、パーツのサイズや配置が異なるデザインを制作していった。 「何百回と繰り返しアルゴリズムを入力し、膨大な数のデザインを制作していった。その中から、全体の色やリズム、余白のバランスなどを見て、自分が最も好きだと思う作品を最終的に選んだ」のだという。
本作のタイトルは「Two Lovers, in Structure」。2つに分かれているような建築的な特長をいかし、2つのセクションを「恋人」として捉えている。 過去にもテキサスでミューラルアートを手がけているが、本作はこれまで手がけてきたどの作品よりも、最も大きなサイズだという。
建物の壁面に描いていく過程については、「最初はなかなか制作が進まず、完成できるか不安になったけれど、あらかじめ厳密に指定された位置の計測方法を工夫して、徐々にスピードアップできた。ペイントに使った塗料は、アルゴリズムによって指定された色とできるだけ同じ色を、目視で混色しながら制作。円も自分の手で描いていった。アルゴリズムによるデジタルな要素と、自分の手を動かして色を作って形を描く、というアナログな要素がミックスされて完成した作品だ」と語ってくれた。
東京でミューラルアートを描くチャンスがあればチャレンジしたい
タイラーは、「日本、特に東京にミューラルアートの文化や作品が非常に少ないことがとても意外だった」と話す。日本では、主に景観保護などの目的で、建物の外壁などに壁画や広告物を設置するにあたって厳密な表面積の規制があるからだ。
「今回、難しい規制をクリアしつつも、ビル全体を使って描いているようなデザインにしたかった。難しい制約があったことで、よりクリエーティブで、ユニークなチャレンジができたと思う」と語り、「東京で再び、ミューラルアートを描けるチャンスがあったら、またぜひやりたい」と笑顔を見せた。
最後に、今後どんなテーマで作品を作っていきたいかを質問したところ、 「これからも自分の興味関心の赴くままに制作していきたい。デジタルアートだけではなく、ドローイングや今回のようなパブリックアート、ミューラルアートも。そのときに、自分がやりたい、と思ったことに正直に取り組みたい。あと2週間ほど日本に滞在して、箱根や京都、直島などにも足を延ばす予定なので、各地を巡って感じたことや体験が、きっと次の作品のインスピレーションにつながると思う」と話した。
虎ノ門で出会える、世界的クリエーターの新作。ミューラルアートならではの、巨大で迫力ある作品の魅力を、ぜひ間近で楽しんでほしい。
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