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2023年2月10日、モンブラン発祥の店として知られる人気洋菓子店「モンブラン(MONT BLANC)」が自由が丘のカトレア通りに移転オープンした。同店は、和菓子職人の経験を経てフランス、スイスなどで洋菓子の修行を重ねた初代のオーナー、迫田千万億(さこた・ちまお)が1933(昭和8)年に開店した老舗である。
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旧店舗には半地下のティールームを設けていたが、移転後は販売スペースとテラス席で構成。以前の店内と同様に画家、東郷青児の描いた美人画が点在する店内は、まるで美術館のような洗練された空間が魅力である。
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スイーツがずらりと配置された大きなショーケースは、円を描くように周りながら目で見て楽しめるデザインとなっている。手前には生菓子、サイドには焼き菓子、奥には歳暮や中元でも人気の焼き菓子の詰め合わせ「ティーコンフィクト」をはじめとするギフトが並ぶ。
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リゾート気分で過ごせる緑に囲まれたテラス席は、ゆったりくつろげること間違いなし。週末になると満席になることも多いのだとか。
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初代のオーナーである迫田は、登山を目的にフランスを訪れた際、フランスとイタリアの国境に位置するヨーロッパアルプスの最高峰である「モンブラン」の美しさに感銘を受け、それをイメージした洋菓子を作ろうと決意したそうだ。
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登山後「モンブラン」という山の名前を店の屋号、およびスイーツの名称として使用できるよう、その足で麓にあるシャモニー市の市長の元へ出向き、直談判しにいったというから驚きである。
欧州では古くから、生クリームに栗のペーストを乗せた「モンブラン」が食されていたが、渋皮や洋酒の風味の強さが日本人には馴染まなかったため、正月のおせちに使われる栗の甘露煮をあえて使用して、きめ細やかな黄色いペースト状に加工して用いたそう。
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当初、日本ではまだ洋菓子の種類が少なかったことから、迫田はあえて商標登録を行わず、「モンブラン」というスイーツが世の中に広まり、洋菓子が普及することを願った。そして戦後、彼の願い通り日本人好みに仕上げた「モンブラン」は、またたく間に国内に浸透した。
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創業以来変わらない味わいの「モンブラン」(880円、以下全て税込み)は一度は食べておきたいメニューだ。トップのメレンゲは、モンブランの山頂に降り積もる万年雪をイメージ。細く絞り出された黄色いマロンクリームは、山の岩肌を表現しているそうだ。
クリームに包まれた栗は、全国を食べ歩いて厳選した愛媛県産の中山栗を使用。他のものと比較すると、コクと甘みがしっかりとしている点が特徴的である。生クリームは北海道産ものを4種ブレンドし、マロンクリームの風味が引き立つよう甘さ控えめに仕上げている。
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酒好きにも支持される「サバラン」(820円)は、ほろりとした食感とラム酒を使った大人な味わいが魅力。ブリオッシュ生地に生クリームを添えたものが定番だが、同店ではバナナ、イチゴ、ブリーベリーなどの季節のフルーツをふんだんに使用し、フレッシュさをプラスしている。
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あふれ出るイチゴがアイコニックな「エクレール」(780円)も人気を誇る逸品。オリジナル製法で作られたカスタードクリームとブレンドした芳醇(ほうじゅん)な生クリーム、イチゴの甘酸っぱさが絶妙にマッチしたスイーツで、食べ応えも抜群である。
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2023年3月で90周年を迎える同店。日本の洋菓子ならではの味わいを大切に、初代から伝わる製法を守りつつ、「モンブラン」といえばここだと言われるような存在をこれからも目指していきたいという。老舗店ならではの味を楽しみに、ぜひ足を運んでみてほしい。
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