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自動車と聞くと、二酸化炭素を排出しながら走る日常の乗り物ぐらいにしか思わないかもしれない。世界のあらゆる場所に浸透しているものだが、アメリカでは特に、移動のために不可欠な町や都市があるほど、自動車が生活の一部となっている。
こうして我々が当たり前のように利用している自動車は、複雑な社会政治や経済状況の中で、機械と人間の創意工夫により生まれた「驚異」であるといえる。人間と自動車のそうした複雑で依存的な関係を解き明かす展覧会が、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催されている。
『Automania』と題されたこの展覧会は、2021年7月4日にスタート。2021年10月10日(日)までスカルプチャーガーデンなどで行われるビンテージカー展示と、2022年1月2日(日)まで続くギャラリーでの資料展示の2パートに分かれている。
展覧会のタイトルは、イギリスのアニメーションチーム、ハラス&バチェラーが製作した同名のアニメ『Automania』に由来。MoMAはプレスリリースで、この野心的な展覧会は、「現代の工業製品、革新的な輸送手段、スタイルアイコンとしての自動車、さらには死亡事故、車があふれた環境、石油時代における環境災害の原因となった自動車を検証するものである」と述べている。
展示されるのは、文字通り、自動車ファンにはたまらないものばかりだ。ビンテージカー展示には、1973年に製造されたシトロエンDS、エアストリームのトレーラーであるバンビ、武骨な50年代のジープなど9台の名車が登場。ギャラリーには、フォードやゼネラルモーターズのビンテージフィルム、コマーシャル、ポスター、世界中から集められた交通標識などが並ぶ。
この展示会は、自動車がより簡単に安く生産できるようになることで、社会に与える影響が天文学的に大きくなっていった歴史を巧みに振り返っている。一方で子どもたちや若者にとっては、昔のかっこいい車に出合い、素直に感動できる機会にもなりそうだ。
くしくも近年のニューヨークでは、自動車の役割が問われている。先の市長選では、この街での自動車の存在感や影響力の低下が大きな話題となり、多くの候補者が自転車やバスの専用レーンを増やす必要性を訴えていた。『Automania』は、自動車がエキサイティングな未来として位置づけられていた時代にスポットを当てている展覧会だが、今の世の中では、社会における可能性の象徴としての自動車は少しずつ過去のものになりつつあるといえるだろう。
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