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2022年9月16日、東京都墨田区に映画館「ストレンジャー(Stranger)」がオープンした。東京都現代美術館の最寄り駅でもある都営新宿線菊川駅から徒歩1分という好立地。1951(昭和26)年創業の「菊川会館」というパチンコ店跡地を改装した。メタリックな壁面とビビットなスカイブルーのロゴが特徴的な外観が目を引く。
手がけるのは、ブランディングデザインを行っているアート&サイエンス株式会社。代表取締役の岡村忠征は、約10年間映画業界に携わっていた経歴を持つ人物だ。
劇場席数は49席。特集上映を中心に日本未公開作や日本での上映権利が切れた作品などを展開し、独自のプログラム編成を目指していく。劇場設営は、水道橋にあるアテネ・フランセ文化センターがコンサルティングし、既存の映画館に勝るとも劣らない上映環境になっている。
同館の大きな特徴は、映画を観るだけでなく、「映画を知る」「映画を観る」「映画を語り合う」「映画を論じる」「映画でつながる」という5つの映画経験ができる点だ。作品を鑑賞するだけでなく、作品の背景をキュレーターから聞いたり、作品について気軽に意見を交わし合ったり、関心のある情報をシェアし合ったりできる場を目指した。
それらの工夫は、映画館の外から始まっている。ファザード部分には、雨を避ける軒下とベンチを配置。「映画を語り合う」ということを意識して、あえて半公共空間に仕上げたそう。誰でも座れる憩いの場にすることで、映画鑑賞目的だけでなく、話しに来てほしいという思いが詰まっている。
ハイクオリティーなカフェが併設
館内にはコーヒーショップ「ストレンジャーカフェ(Stranger Cafe)」も併設。デザインは建築設計事務所「スナーク(SNARK)」が手がけており、コーヒーは、群馬県前橋市にあるスペシャルティコーヒー焙煎(ばいせん)所兼スタンドの「敷島焙煎所(SHIKISHIMA COFFE FACTORY)」が同館のために開発したオリジナルブレンドコーヒーを提供。フード類は、学芸大学にあるベトナムカフェ「チェー・バーバーバー」がメニュー開発を担当している。
「チポトレ・チキンサンドウィッチ」(880円、以下全て税込み)は、メキシコを代表する調味料、薫製唐辛子の「チポトレ」ソースとスパイスを調合したマリネ液で下味を付けた鶏肉のバーガー。たっぷりのミントとスパイシーなソースとの相性が絶妙な一品。カモミールと爽やかなスパイスの組み合わせがピリリときいている「自家製スパイシーレモネード」(600円)もやみつきになるおいしさだ。
このほか、アメリカ南部のスープ料理「ガンボ」や、その場で揚げたてを提供する「ガーリックミモレットフライドポテト」(680円)など本格的なフードメニューや、メキシカンクラフトビール、チリワインなどのアルコール類も揃える。カフェだけでも利用できるので、ぜひ訪れてみてほしい。
グッズ展開にも「映画でつながる」という思いが込められている。オリジナルグッズの物販に力を入れることで、つながりを広めていくのはもちろん、ゆくゆくはカフェ空間を活用して、アパレルや飲食店とのコラボレーションも検討しているという。「例えば、クリームソーダが印象的な映画を上映している時に、ゴーストキッチンスタイルのクリエーターとコラボして、クリームソーダのポップアップショップなどを展開していきたいです」と岡村は語る。
このほか、SNSなどを駆使して「中の人の顔が見える」情報発信を行っていく。キュレーターから聞いた上映作品の背景や、同館で上映に至った思い、作品や特集のポイント、上映作品にとどまらず映画についての感想・評論などを発信していく。また、自社のウェブメディアやZINE、雑誌も発行予定だ。
こけら落としは「特集:J=L・ゴダール 80/90年代 セレクション」。この特集のためだけに、日本上映権利切れの作品6本を、仏・ゴーモン社より買付したそう。第2弾の特集企画は「B・クローネンバーグ『アンチヴァイラル』限定上映+α」を予定している。東東京エリア初のミニシアターにこれからも目が離せない。
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