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焼き鳥の発祥は、寿司と同じように質素なものだ。諸説あるが、焼き鳥は屋台料理から始まった。寿司と同じように屋台の食べ物だった焼き鳥が、今では高級レストランで味わうことができるようになった。
目黒駅近くにある鳥しきは、そんな高級焼き鳥店の一つ。オーナー兼料理長の池川義輝(いけがわ・よしてる)が2007年にオープンさせた店で、2010年からミシュランの星を獲得している。17席ほどの店内は、2カ月先まで予約で埋まっているほどだ。
メニューはなく、その日仕入れた旬の食材が書かれた木札がずらりと並ぶ。あとは池川におまかせしよう。
メニューは、シンプルな串焼きがそろうが、鳥しきでは定番ものでも感動する味わい。鶏のモモ肉は底知れぬ柔らかさで、レバーといえば、ジメジメとしたミネラルの風味があり食感も粗いが、ここでは口の中でとろけるような食感のルビー色のレバーが味わえる。
「福島の『伊達鶏』という特別な放し飼いの鶏を使っています。フランスのブレス種に近く、国産の中では風味がいいんです」(池川)。
そして、一流の焼き鳥には炭も重要な要素。「高温に耐えられる上質な炭を使うことが重要です。その熱で鶏肉をジューシーに仕上げるんです」
素手で串を折っているため、爪が黒く変色し、溶けている。そんな池川の情熱が、客を魅了するのだ。ミシュランの星を獲得し、ニューヨークの高級店にもかかわらずゲストのために串焼きを焼くという、並々ならぬ情熱を持っているのだ。
「小さな店なので、カウンターに空きがあっても対応できないことがあるんです。満席でお断りするのは申し訳ないですし、わざわざ食べに来てくださる方がいることが当たり前だと思いたくないんです」
シェフは入り口の神棚を指差す。「あれは目黒の大鳥神社の神様を祀っているんです。毎晩料理を始める前に、神様にお参りして、感謝の気持ちを伝えています」
カウンターの席の需要が多いことについて聞いてみると、池川の答えは一つだった。「みんな焼き鳥が好きなんですよ。この店の客席は少ないかもしれませんが、今後は海外にも進出し、より多くの人にこの文化に触れてもらいたいと思っています」
「だから、秀男がチームにいるのはとてもいいことなんだ」と、自慢の息子のように弟子をにこにこしながら見つめる。「彼はアメリカに留学していたので、私より英語がうまいんです。お客さんがどこの国の人であっても、会話ができることはとても大切なことです」
鳥しきの営業時間は17〜21時、毎週日曜と月曜が定休日だ。運試しに予約してみては。毎月最初のサービスデーに電話すれば、空席やキャンセルが見つかるかもしれない。
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