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近年、盛り上がりを見せるMCバトルシーン。2022年には「高校生ラップ選手権」が復活、ZeebraがバトルMCとして出演し、優勝賞金1,000万円をかけた「BATTLE SUMMIT」が日本武道館で開催され、いまだ謎が多い新団体「FREE STYLE LEAGUE(FSL)」が立ち上がるなど、大きく注目された年でもあった。
そんなシーンの火付け役ともいえる「戦極MCバトル(以下戦極)」が、相撲の聖地「両国国技館」で2023年3月12日に開催された。MCバトルとしては初の国技館開催となり、24人のMCがしのぎを削る戦いを見せた。
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戦極は、前進となる「戦慄 MC BATTLE」として、2007年に立ち上がった歴史あるイベント。近年ではラッパーのみならず、アイドルや芸人、話題性のある新人などをブッキングし、シーンに新しい風を吹き込んでいる。
チケットは早々に売り切れ、当日は「満員御礼」。会場の国技館は最大1万人収容という規模ながら、どの位置からも見やすく臨場感のある造りに驚かされる。大相撲用のつり屋根は天井高くにくくり付けられライブ仕様になり、枡席で靴を脱いでライブを鑑賞するという新鮮な光景が見られた。
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本戦は24人のトーナメント形式で行われた。ベテランMCの呂布カルマや晋平太、漢 a.k.a GAMIら、1月に行われた真の日本一を決める「KING OF KINGS」で優勝したばかりの裂固、予選から上がってきたMCリトルといった実力派に加え、MonyHorse(Yentown)やG YARD(Sound's Deli)など、普段はMCバトルに出場しないラッパーも登場した。
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そして当日の判定は、アリーナ席の客が挙げる赤か青のサイリウムに委ねられた。客が決めるというのもバトルの醍醐味、決まったルールはなく、どう判断するかは基本的には自由。「ビートに乗って韻を多く踏んでいた」「アンサーの巧さ」「心地良いフロー」「とにかく推しである」など理由はさまざまだ。
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1回戦では、バトルには1年ぶりの復帰となるSAM、そしてHIKIGANE SOUNDの梵頭の試合が印象的だった。梵頭が出場した格闘技「ブレイキングダウン」ネタが飛び出し、SAMはブランクを感じさせないキレッキレの韻とパンチラインで圧倒。今日は優勝するだろうと感じさせるオーラをすでに放っていた。
そして、出場キャンセルとなったSATORUのリザーバーとして登場したミステリオも、終始凄まじい熱量だった。「かっこいいのじゃなくておもろいの見せに来たで」と、ギャグラップというスタイルで、これまで戦い続けてきた決意が垣間見られるバトルを繰り広げていた。
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準決勝では、バトルビートを流すDJのPEKOとYANATAKEに、ビートメーカーの呼煙魔が加わった(呼煙魔はMPCを即興で叩きビートをその場で作り上げていくスタイル)。そして、勝負は16小節2本、もしくは8小節4本の選択制に。Fuma no KTR対SAMでは、KTRが先行を取りビートと選択権を得て、得意とする16小節の勝負で挑むも、SAMがえげつない押韻を踏みまくり勝ち切る。
そして、呂布がCHICO CARLITOを倒し、決勝は呂布対SAMに。2人はなんと10回目の対戦。バトルビートは定番の「紫煙」だ。ドラマティックなビートに合わせて呂布が「ヒップホップを真面目にやってる、こんなもん遊び」と飄々とかわし有利にも見えたが、延長もなしでSAMが優勝。呂布は「戦極」では5回連続の準優勝となった。
優勝したSAMは同じ栃木県出身の盟友で、今回司会を務めたMAKAに飛びつき、喜びをかみしめていた。
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国技館が舞台ということもあり、熱の入ったMCが多く、またそれぞれのMCが国技館にかけたラップをしていたのも印象的だった。なお、戦極の公式YouTubeからは当日の試合をいくつか見られるので、ぜひチェックしてほしい。
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