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1920年以来、コンサバス・ピニャイス社(Conservas Pinhais & Cia)の缶詰工場では、魚の仕入れから、加工、調理、缶への油の注入など、製品出荷までの全ての工程を昔ながらの方法かつ、手作業で行っている。ポルト近郊、マトジニョシュという街のメネレス通りにある工場は、現在も稼働しているポルトガル最古の工場の一つで、2020年には、自治体から重要な建物に指定された。
うれしいことに、ポルトガルの伝統的な缶詰作りが行われているこの工場が、2021年10月から「リビングミュージアム(生きている博物館)」として、一般へ開放されることになった。ミュージアム化に当たり、投じられた費用は300万ユーロ(約3億8,600万円)。ピニャイス社の声明によると、このミュージアムでは工場見学や展示を通して「全ての製造工程の見学で没入感のある体験が得られ、ピニャイスの歴史や国際的に知られている『NURI』など製品のルーツを知る旅に出られる」という。
ミュージアムで見られるのは、職人を中心とした缶詰生産の歴史の一部である、多様な展示品、会社と缶詰産業の歴史(デジタルコンテンツ)など。また、職人に教えてもらいながら、缶を紙で包む工程にも参加可能だ。
工場見学の最後に用意されているのは、建物の中でも最も印象的な部屋の一つで、ピニャイス社製品のおいしさが味わえる実食体験。そしてもちろん、気に入った缶詰やコレクターズアイテムはショップで購入することができる。
ピニャイス社のマーケティング・ディレクターである、パトリシア・ソウサは、声明に次のようなコメントを寄せている。
「このプロジェクトの目的は、業界の記憶と遺産を守り、ブランドの起源、製造工程、物語、そして関わっている人々を共有すること。また、過去100年にわたって当社の道を切り開いてきた創業家の、各世代への敬意を表するものでもあるのです」
「歴史的な建物から製造方法まで、ピニャイス社で見られるあらゆるものは我が社の『本物』『伝統』『品質』を表しています。そして最も重要なのは、146人の従業員から成る我が社の『ファミリー』が、世界で事実上消滅してしまった缶詰作りの職人技を習得し、守り続けてくれていることです」
工場のミュージアム化は地元企業であるNorasil社が担当し、マトジニョシュ市の行政も組織的に協力。さまざまな年齢層が楽しめるミュージアムとして、インクルーシブなものになっている。今後は、企画展、教育向けサービス、ワークショップなどの取り組みも行っていくという。
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