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日本が誇るインド宮廷料理店「マシャール」が大森にオープン

カレーからビリヤニ、タンドール料理まで北インドの最高峰を堪能する

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Shintaro Kumihashi
インド宮廷料理Mashal
Photo: Keisuke Tanigawa
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2022年7月1日、大森に北インドの宮廷料理を提供する「インド宮廷料理Mashal(マシャール)」がオープンした。インド料理と聞いて、丸い皿からはみ出んばかりのナンとこってりしたバターチキンカレー、つまりは「北インドのカレー」を思い浮かべていたのは昔の話。今は南インドや西インド、インド亜大陸まで視野を広げ、ネパールやスリランカなど各地域のスパイス料理が楽しめる時代になった。

北インド料理への注目は細分化により分散されたが、さまざまな地域の料理を食べ比べることができる今だからこそ、改めてじっくりと味わういい機会かもしれない。「マシャール」は最高峰の宮廷料理でその期待に応えてくれる。

インド宮廷料理Mashal
Photo: Keisuke Tanigawa

超一流シェフによるムグライ料理

シェフは16歳から料理の道を歩み、デリーのカリームホテルやムンバイのタージマハルホテルでチーフシェフを務めたモハメド・フセイン。来日して38年、赤坂タージインドレストランやアジャンタ、シターラなどで腕を振るい、彼を師と仰ぐシェフも多い、インド料理の達人だ。

インド宮廷料理Mashal
モハメド・フセイン(Photo: Keisuke Tanigawa)

「マシャール」ではフセインが長年腕を磨いてきた「ムグライ」料理がメインとなる。ムガル帝国時代(16~19世紀)に北インドの貴族のための食事が発展した料理で、カレーもビリヤニもタンドール料理も、ナッツや生クリーム、ギー(バターオイルの一種)によるリッチな味わいと、ふんだんに用いられるスパイスの贅沢な香りが特徴的だ。

インド宮廷料理Mashal
席によってはフセインの手さばきが垣間見えることも(Photo: Keisuke Tanigawa)

その中でもフセインが作る料理は、全てが華やかで上品。熟練のテクニックにより流れるように調理が進むが、その一つ一つが丁寧で、香りと風味、色味までが細やかに整えられて理想の料理が作られていく。美しい盛り付けも相まって、その贅沢さを体感することができるはずだ。

インド宮廷料理Mashal
Photo: Keisuke Tanigawa
インド宮廷料理Mashal
絵画はインド料理ユニット、マサラワーラーのメンバー、アーティストの武田尋善(たけだ・ひろよし)によるもの(Photo: Keisuke Tanigawa)

店の立ち上げ計画は2021年3月。コロナ禍の影響もありフリーになったフセインと、アジャンタで同僚だったアリ・三貴子の2人で、中にはプロ向けのものもある料理教室を中心に、カジュアルなスタイルで新たなファンも増やしてきた。オープン前から実施しているクラウドファンディング(8月23日(火)まで継続中)は開始45分で目標達成になったという。

インド宮廷料理Mashal
Photo: Keisuke Tanigawa

タンドール(インド式の円筒型の窯)料理が充実したランチタイムは、好みのカレー1種にナンかライス、タンドーリーチキンとフィッシュティッカとシークカバブそれぞれ1ピースが堪能できる「タンドーリーランチ(2,398円、税込み)」がおすすめだ。インド料理だけでなく西洋料理にも精通するフセインだが、特にタンドール窯の扱いは秀逸で、ナンやタンドーリーチキン、シークカバブなどを最適な火加減で焼き上げる。

マシャール
Photo: Keisuke Tanigawa
インド宮廷料理Mashal
Photo: Keisuke Tanigawa

カレーは濃厚でコクのある北インドのものが多く、例えばマトンコールマーはコンフィされてほろほろの骨付きマトンにうま味と香りが詰まったこってりとしたグレイビーソースがかかり、ミックスベジタブルはジャガイモやインゲン、カリフラワーなどの野菜がナッツや生クリームベースのソースとよく絡み合う。どちらもナンとの相性がとても良い。

定番のバターチキンカレーはトマトの酸味がきいた仕上がりで、ホウレンソウやエビのカレーはクリーミーで濃厚。少し変化をつけたいときは、南インドの要素を取り入れたスパイシーチキンカレーを試してみるのもよさそうだ。

結局は8種全て食べたくなるし、どれも外れがないどころか大当たりだろう。

インド宮廷料理Mashal
Photo: Keisuke Tanigawa

ビリヤニもモダンインディアンも

ビリヤニもぜひ味わいたい一品。ランチタイムは日替わりのビリヤニが注文できる。濃厚かつ繊細な味わいで、時間をかけて煮込まれた肉はとろけるような食感。ふわパラに炊き上げられた米は、一口目から口いっぱいに香りとうま味が広がる。日替わりメニューのブンディライタ(ひよこ豆ベースの揚げ玉入り)との相性も良い。

マシャール
Photo: Keisuke Tanigawa

一皿で満足感が体中に染み渡るディナーでは、カレーもタンドール料理もビリヤニもバリエーション豊かだが、宮廷料理の醍醐味(だいごみ)ともいえるパーティメニューも一度は堪能してみたい。デリーのカリームホテルや、ムンバイのタージマハルホテルの伝統的なムグライ料理の再現メニューだけでなく、シェフのセンスで再構築した「モダンインディアン」と呼べるメニューも並ぶそうだ。

インド宮廷料理Mashal
Photo: Keisuke Tanigawa

インドの肉団子、「コフタ」をアレンジしたものや、さまざまなマサラで香り付けしたラムチョップなど、フセインの頭の中には新しい料理のアイデアが無数にあるという。食べる側の想像力をかき立てる美しい料理の数々。日本にいながら完成度の高い最先端のモダンインド料理が食べられるというのは、なんと贅沢なことか。

インド宮廷料理Mashal
Photo: Keisuke Tanigawa

インド料理の魅力が体感できる店に

インド亜大陸のローカルな料理にスポットが当たり、魅了される人が増えたが、北インド料理の本当の魅力に気付いている人は意外と少ないのではないだろうか。

ムグライ料理には伝統に裏付けられた膨大な知恵があるが、「マシャール」にはそれらの経験や技術に加えて、フセインのセンスがある。超本格的な料理を日々同じクオリティーで作りながら、新しいレシピを生み続け、伝統的なカルチャーもあり、自由に変化もしていく――、「マシャール」は、インド料理の面白さを教えてくれるようにも思う。全身でインド料理、宮廷料理の魅力を感じてみてほしい。

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