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地中海の中央に位置するマルタは、薬物に対してリベラルなアプローチを取ることで知られてきたわけではない。しかしもうすぐこの国では、欧州連合(EU)加盟国として初めて、個人使用目的の大麻が「合法化」され、18歳以上の国民であれば娯楽用大麻の購入、4グラムまでの所持、4株までの自宅栽培が可能になる。
「ヨーロッパ」「大麻」といえば、オランダが頭に浮かぶかもしれないが、同国は大麻の使用と販売を「容認」している状態。コーヒーショップでの大麻販売は一定の条件下で許可され、個人使用も非犯罪化されているので、少量の栽培や所持であれば訴追されることはない、というだけである。スペインも似たような状況で、個人使用と栽培は犯罪とならないが、販売、取引、公共の場での使用は依然として完全に違法である。
オランダやスペインと違い、マルタでは大麻の使用も販売も合法となる。しかし、だからといって全てのマルタ国民が好きなだけ大麻を栽培し、吸い、持ち運べるというわけではない。7グラム以上の大麻所持では、最高で100ユーロ(約1万2,900円)の罰金を科せられる可能性がある。また、公共の場で吸った場合は235ユーロ(約3万0,300円)、子どもの前で吸った場合は500ユーロ(約6万4,500円)の罰金が設定されている。これらの法律の執行は、新しい公的機関であるAuthority on the Responsible Use of Cannabis(大麻の責任ある使用に関する機関)が担うという。
マルタ政府は、大麻がより強力な薬物の使用への入り口であることは証明されていないという研究を政策の根拠とし、この改革を推進。闇市場を抑制し、大麻をより合理的に規制することを目的としてこの新しい法律を作った。
マルタの動きにより、EUのほかの地域に住む大麻愛好家は、近いうちに大陸をまたいだ大麻合法化が起きることを期待している。そんな中、次に「来る国」はルクセンブルクだ。同国ではすでに、大麻の栽培、販売、娯楽利用を合法化する法案が議会を通過。またドイツは、2022年に大麻の非犯罪化に関する一連の改革を打ち出すと広く予想されていて、スイスでも同様の措置がとられる見込みだ。イタリアでは近い将来、この問題についての国民投票が予定されている。
一方イギリスでは、大麻がすぐに合法化される可能性は極めて低いと思われる。一部の警察は、娯楽目的の利用者を起訴しないとしているが、1オンス(28グラム)以下の大麻の所持でも警告や罰金を科され、それ以上の場合は、最長で5年の禁固刑になる可能性がある。
イギリスの大麻愛好家にとって、状況は暗いかもしれないが、少なくともほかの場所には希望があるのではないだろうか。マルタの新しい改革は、2021年12月14日に議会を通過済み。今週末に大統領が法案に署名し、成立する予定だ。
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