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予想通りの大ヒット、新海誠の「すずめの戸締まり」をレビュー

視覚的に美しい青春ロードムービーが新海作品史上最高の売り上げを記録

Emma Steen
テキスト:
Emma Steen
Former writer, Time Out Tokyo
Suzume no Tojimari
Photo: ©2022SNTFP
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「君の名は。」「天気の子」などの作品で知られる新海誠の新作「すずめの戸締まり」が、2022年11月11日に全国公開された。深海の作品といえば、少年と少女の運命的な出会い、そして超自然をモチーフにした壮大なファンタジー。人間の細部までを細かく表現し、繊細なタッチのアニメーションを作り上げることで、国外でも多くの評価を得ている。

新作の舞台は、九州の田舎町。17歳のすずめ(鈴芽)が謎の扉を探して旅する少年、草太(そうた)との出会いを通して災いを呼び込む「扉」の存在を知り、「戸締まり」の旅に出るというロードムービーだ。

気になるのが、大学生だという草太のキャラクターが高校生のすずめとマッチせず、観客に緊張感を与えてしまうという点。しかし、この青年は序盤で小さな椅子に姿を変えられてしまうので、心配はいらない。

幼い頃に母を亡くしたずずめは、叔母と2人暮らし。ある朝、登校中に長髪の見知らぬ青年とすれ違う。どこか不思議な風貌の青年はすずめに廃虚への道を尋ね、ある扉を探しているのだと説明する。 戸惑いながらも青年に惹かれたずずめは、近くの山中にある荒廃した温泉街を案内。そのまま学校に向かうが、どうしても青年が気になり、授業を抜け出し一人で廃墟へと向かうのだった。

Suzume no Tojimari
Photo: ©2022SNTFP

そこで見つけたのは、異界に通じる不思議な扉。物語が大きく展開していくのは、すずめが扉の前に刺さっていた要石を誤って引き抜いてしまう瞬間からだ。要石が引き抜かれたことで封印が解け、災いを引き起こす「ミミズ」が出現してしまう。

謎の青年、草太と再会するすずめ。草太は災害を防ぐため扉を閉めて鍵をかける「閉じ師」として旅を続けていると話す。この時、石の状態から白猫に戻った「ダイジン」も登場する。しかし、せっかく草太と再会したものの、草太を毛嫌いするダイジンは草太を小さな椅子に変える呪いをかけ、そのまま逃げ出してしまうのだった。

草太が人間の姿に戻れるように手助けをすることを決意したすずめは旅に同行し、日本全国の「戸締まり」の旅に出る。映画の進行時間はここまでで、30分ほどだ。 

Suzume no Tojimari
Photo: ©2022SNTFP

本作が新海の過去2作と関連していることは、最初から明らかだった。「君の名は」で主人公が髪を束ねるのに使っていた赤いひもが、本作ではすずめの制服のリボンとして再登場しているのが気になる。また、マクドナルドの奇妙な商品広告も少し不快な再登場になった。「天気の子」ではそれが東京の日常生活の一部であるという理由で許したが、今回はどうしても気になって仕方がないのだ。

また、魔法の扉とその行き着く先の物語も、十分に説明されることはない。時折すずめの過去がフラッシュバックし、母親を亡くしたことが語られるが、運命を変える冒険をする前の主人公の姿があまり描かれていないのも残念な部分である。

Suzume no Tojimari
Photo: ©2022SNTFP

しかし本作は、単なる商業的な作品というわけではない。新海が息をのむようなシーンに多くの労力を費やしていることがよく分かるからだ。同じ構図を繰り返し描く画家のように新海は完璧を求め、自分の中で進化した哲学を作品に反映させている。観客に強い印象を残すことでより良い作品にしようという深海の努力が感じられた。

「すずめの戸締まり」は初日から3日間で興行収入18億8,000万円、観客動員数約133万人を突破し、新海作品史上最高のヒット作となった。本作の成功は、新海が作り出す見事なアニメーションの全てのシーンに価値がある、という事実を確立したといえるだろう。

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