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江戸川区で最も標高が高く、開放感あふれる「なぎさ公園」に、「魔女の宅急便」の原作者で、児童文学作家の角野栄子がプロデュースした新施設「魔法の文学館」が、2023年11月3日にオープンした。同施設は、角野の想像力や世界観を表現した児童文学館だ。
江戸川区は角野のゆかりの地。3〜23歳を同区で過ごし、その思い出が著作にもつづられている。オープン当日には角野が訪れ、来場者30人に記念品を渡しながら「来てくれてありがとう」「楽しんでくださいね」と会話を楽しむ様子が見られた。
ここでは、同館でしかできない5つのことを紹介する。文学館だが、大人も楽しめる要素が盛りだくさんだ。ぜひ、訪れる際の参考にしてほしい。
1. 絶景のロケーションと建築を堪能する。
魔法の文学館は、なぎさ公園の小高い丘の上にある。春には満開の桜やツツジ、夏には木々の深緑、秋には美しい紅葉が景色を染め上げる。四季折々の風景に溶け込む同館の白い壁は、自然との調和を第一に計画されたという。
設計を担当したのは、角野の物語のファンである隈研吾。特徴は、「フラワールーフ」と呼ばれる屋根の部分だ。温もりのある「おうち」を目指し、小さな屋根をいくつも重ね、花びらが広がるように設計した。近年のミュージアムや文学館などの施設は、シンプルに抽象化されたモダニズム建築が主流だが、角野の豊かな世界観には合わないと隈は感じたという。大きさや高さの違う四角い窓も、「おうち」っぽさを演出している。
2. コリコの町で8000冊の本と出合う。
入館すると、角野のイメージカラーである圧巻の「いちご色」の世界が広がり、大人も心が躍る魔法の空間へと誘われる。1階は「魔女の宅急便」に登場する主人公のキキが13歳で旅立ち、初めて舞い降りた地「コリコの町」をイメージしたエリアだ。
猫耳の付いたモニターでは角野が人々を出迎え、プロジェクションマッピングには作中に登場するキャラクターたちが映し出される。アートディレクションは角野の娘であるくぼしまりおが担当した。
同館には、約1万冊の本が収蔵されており、約8000冊が小さな家が集まってできたかわいらしい本棚に並んでいる。著書のほか、魔女に関する研究書や高学年向けの読み物などが揃う。
外国語の本も約200冊置かれており、「世界で読まれる角野文学」のコーナーでは、海外向けに翻訳された作品が壁一面に展示。国ごとに違う表紙を楽しむこともできるのも面白い。
3. 角野作品のかわいさの源を知る。
2階には、自宅の仕事場をイメージした「栄子さんのアトリエ」がある。いちご色の棚には、愛読書や角野が旅先で集めた美しい小物が並ぶ。デスクには直筆の原稿や手帳、絵の具などが置かれている。
壁際には、角野の特徴の一つである服やアクセサリーが展示されている。「アトリエコート」は、ヨーロッパの母親たちが仕事をするときに着用していた上着をイメージし、アレンジして仕立てたもの。明るくカラフルな生地で、襟がついたかわいらしいデザインだ。
また、角野といえば色とりどりの眼鏡が印象に残っている人も多いのではないだろうか。何を着るか迷った際は、角野はまず初めに眼鏡から決めるという。
4. 優しい気持ちがこもったオムライスを食べる。
3階にある「カフェ キキ(café kiki)」は、旧江戸川を一望できる見晴らしのいい空間が広がる。角野作品に登場するスペシャルメニューなど、ここでしか味わうことができない品を多数揃える。
「キキライス」(1,320円、以下全て税込み)は、「おばけのアッチ」に出てくる「レストランひばり」のちょっと変わったメニューの一つ 。「オムライス山」をイメージした特製メニューで、卵を使用しておらず、白いんげんとニンジンのペーストで仕上げたスクランブルエッグとトマトソースがかかっている。
このメニューには、角野の「卵アレルギーの子にもオムライスを楽しんでほしい」という願いが込められている。フワトロの食感も味も、驚くほどオムライスにそっくりだ。
「チとキのサンドイッチ」(1,200円)は、「おばけのアッチ」に登場するふたごのねずみ「チ」と「キ」をイメージした2種類のサンドイッチのセット。チはカレー風味のチキンクリスプサンドで、キはきんぴらごぼうのサンドイッチだ。パンには黒ゴマが練り込まれており、しっとりとした口触りとゴマの風味が楽しめる。
5.いちご色のオリジナルグッズを手に入れる。
ショップには、いちご色のオリジナルグッズから角野栄子作品のかわいいキャラクターグッズ、愛用のアトリエコートやセレクト雑貨まで、ここでしか手に入らないグッズ約100点が並ぶ。ジャムと焼き菓子の店「メゾン ロミ ユニ(Maison romi-unie)」の焼き菓子が詰まったクッキーや、アッチのぬいぐるみなど、心躍るものが盛りだくさんだ。
角野の著作も購入できるため、映画しかまだ観たことがない人は、この機会に原作を読んでみてほしい。いちご色のコリコの町など、同施設内で表現されている世界をさらに楽しむことができるだろう。
角野は「訪れた皆さんが、幼い頃の私のように心をときめかせ、ワクワクする時間を過ごしてくださいますように。あなたが手にした本の中に、たくさんの冒険と不思議が詰まっています」と話す。子どもはもちろん、大人も楽しめる同館に訪れ、童心を思い出し魔法の世界を堪能しよう。
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