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音楽レーベル「mAtter」主宰のアートギャラリー&ショップの「ロウ(LOWW)」が大岡山にオープンした。駅前には東京工業大学があり、商店街が栄えてはいるが、繁華街とはいえないこの街でスタートしたのはなぜなのだろうか。黒に近い深緑の内装が印象的な店内で、オーナーの濱崎幸友に話を聞いた。
ー大岡山という場所に決めたのはどうしてでしょうか?
まず、自分自身がこの辺りに長年住んでいたということが大きいです。あと、通りにはインディペンデントなアートやクラフトのお店が何軒かあるんです。ヨーロッパの裏道には魅力的なお店が多いのですが、もし出店するならそういう場所で、かつネイバーフッド感が出せる場所と考えていました。
ー「ロウ」のコンセプトを教えてください。
ロウは、サウンドアート系の音楽レーベル「mAtter」の常設店です。レーベルのリリース作品や展示のグッズなども販売します。これまでも交流があるアーティストとともに展示を各所のギャラリーなどで行ってきましたが、初めて自身のスペースを持つことができました。
音楽は香りのように、時間の経過とともに存在を感じるものだと思っています。ギャラリーには物として存在しているものを飾りますが、それがなくなったときにどう感じるのか。また、料理など作業をしている時にふと入ってきた音からインスピレーションを得ることもあるのではないでしょうか。例えば何かを使った時に立ち上がってくる気配や存在のようなものを提案できたらと考えています。それと同時に「不在感」というアンビエントに通じるテーマがコンセプトです。
ーレーベルはどのような経緯で始めたのですか?
自分自身はレゲエやダブ、ソウルをかけるDJとしてキャリアをスタートしましたが、自作曲はアンビエント、ドローンを作っています。当初は別のレーベルから音源を発表していたのですが、よりアート性の強い作品を発表したいと思い「mAtter」を設立しました。幸いなことにその音源が世界に広がってくれて、現在リリースしているアーティストたちとつながることができたのです。
ー今後ライブやインスタレーションを行う機会はあるのでしょうか? また展示はどれくらいの期間で入れ替える予定ですか。
ライブはスペースの都合上難しいですが、トークショーなどを行う予定です。展示は月に2回入れ替えます。「空間と音に関する考察」をテーマにテキストを書いてもらって冊子とCDにして出したり、ほかにもまだアナウンスできないのですが、楽しみな展示が既にいくつか決まっています。
ーどのような場所に発展していくことを期待していますか?
生活とともにアートがあることが一番大事なのではないでしょうか。今は普通に作品を作れる社会ですが、もし自由に作れなくなったり、アートがなくなったときを想像したら悲惨です。アートを通して社会とつながる場になってくれたらと願っています。
また、サウンドアートは難しく思われがちですが、作家と話してみると、パンクやレゲエで育って、自分が表現するならとサウンドアートを選んでいる人も多いです。機会があればぜひ話しかけてみてください。
ロウでは、レーベルのリリース作品はCDやレコードをはじめ、USBなどの特殊なフォーマットも扱う。装丁が美しく、フィジカルで持つことの意義を見いだせるようなこだわりが詰まっているのだ。
展示が目当てで来店した人はもちろんだが、近隣の住民がふと立ち止まって中をのぞいていくのも印象的で、さまざまな人が交流するサロンのような場所になるのかもしれない。オープンしてまだ日が浅いが、世界中のアーティストからコンタクトがあるそうだ。大岡山から世界とつながる新たなスペースの今後を見届けたい。
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『ロウ』
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