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喧騒(けんそう)から解き放たれた都心の森、豊かな緑が風にそよぐテラスに座れば、小鳥たちのさえずりに癒される。そんな東京のオアシス「アンスティテュ フランセ東京」に、2024年6月2日、伝説のフランチシェフであるベルナール・ ロワゾー(Bernard Loiseau)の思いを受け継ぐビストロ「ロワゾー ドゥ フランス」がオープンした。
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フランス政府が運営する東京日仏学院は、1952年に開校。2021年7月には、建築家の藤本壮介が設計した「Village as Institute」 と呼ばれる3階建ての新校舎が完成した。木々に囲まれ連なる屋根や回廊、小道がフランスの村をイメージさせる非日常空間の一角、「ロワゾー ドゥ フランス」の舞台である。
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ブルゴーニュの本店を踏襲し、ブラウンを基調にした落ち着いた雰囲気の店内は、63席のテーブルがゆったりと配置。洗練されたワインセレクションを備えた型押しオークのワインライブラリーやデザートトロリーが、ロワゾーのエレガンスを感じさせる。 エントランス部分にある20のテラス席は中庭に向かって広がり、オープンエアで味わうフレンチは格別だ。
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ベルナール・ロワゾーは、フランス料理界を代表する重鎮の一人。バター使いを少なくし、フランス料理の重いソースを軽やかに味わえる手法を考案した。食材の焼き汁を水で溶かしてソースを作る「水の料理」を生み出し、革命児と呼ばれた。
惜しくも2003年に逝去したロワゾーだが、2023年には長女のべランジェール・ロワゾー(Berangere Loiseau)が、ブルゴーニュのソーリューにある本店「ルレ ベルナール ロワゾー」の最高経営責任者(CEO)に就任、妹のブランシュ(Blanche) はグループのレストラン、「ロワゾー デュ タン」(ブザンソン)の料理長として活躍している。
男性中心のガストロミーの世界で、父亡き後、姉妹が規模を拡大していき、今や5つのレストランと2つのホテルを展開。年間6万人の顧客が世界中から訪れるほどのスケールに押し上げた。
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日本への憧れが結実
ロワゾーと日本との関係は長く、1992年から1995年にかけては関西・神戸に自身のレストラン「ラ コート ドール」 の支店をオープン。日本通であった父の話を聞いていた少女時代の姉妹は、幼い頃から日本に憧れを持ち、姉は日本に語学留学、妹は徳島の名店「青柳」で修業するなど、再び日本でロワゾーのエスプリと味を伝えたいと、機会をうかがっていたという。
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リーズナブルながらロワゾーの味を完璧に再現
料理長は、フランスでベルナールの薫陶を受けた市川健二が就任。メニューには、ロワゾーのスペシャリテを満喫できる料理が並ぶ。
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「アレクサンドル・デュメインの愛したパテ・アン・クルート」「ブッフブルギニオン ベルナール・ロワゾースタイル」「白身魚のクネル ナンチュアソース」などフランスのビストロを代表する前菜、メイン各4種から1品ずつ選べるランチが2,800円(以下、全て税込み)、ディナーは4,800円と驚きのコストパフォーマンスの良さを発揮する。プラス1,200円で、本店と同様ワゴンで運ばれてくる「パリ・ブレスト」「サントノーレ」など、まさにフランスを代表するケーキとコーヒーを追加できる。
食材はオーガニックを使用、グルテンフリー、砂糖を使用しないなどヘルシーな料理を多く提供するが、ロワゾーの味は完璧に再現されている。
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「ブフ・ブルギニヨン」は、牛肉を赤ワインでじっくり煮込んだブルゴーニュの郷土料理。牛肉のすね肉や肩ロースなど硬い部位をじっくり煮込むことでうまみが引き出され、ほろりと柔らかい。
ロワゾーの看板料理である「パテ・アン・クルート」は、カモやホロホロ鳥、地鶏などのほか、豚肉、フォアグラなどのテリーヌを詰めたパイ包みだ。風味豊かでコク深いバターをふんだんに使ったパイのサクサク感と、中に詰められたテリーヌとの食感のバランスが絶妙だ。
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ワインから茶までフランスの一級品が揃う
ワインセラーには、ブルゴーニュをはじめ、フランス国内からリーズナブルな品を揃え、グラスでも常に10種類以上のセレクションを提供。ティータイムにはマリアージュフレールの紅茶、アペリティフにはロワゾーのクラフトビール、シードルなどが楽しめるほか、ヴィエノワズリー類も販売する。また、フランスらしい小粋なロワゾーグッズを販売するブティックも併設されている。
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気分はパリのビストロ。本場のフランス料理を味わうのにこれほどふさわしいテラスはないだろう。
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