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ロシアのウクライナ侵攻を受け、人口わずか280万人のバルト海の小国、リトアニアの人々が怒りをあらわにしている。
リトアニアの南西にはロシアの飛び地であるカリーニングラードがあり、約300キロメートルの国境を共有。東の国境の大部分が接しているのはロシアの同盟国、ベラルーシだ。1991年にソ連から独立したこの国は、今でもロシアに、いわば「挟まれた」状態にある。
ロシアの大統領であるウラジーミル・プーチンが戦争を仕掛けている今、こうした環境にあるリトアニア人が少なからず神経をとがらせているのは理解できる。同国政府はリスクを回避しようと、2022年2月24日に非常事態を宣言した。
その中にあっても、リトアニアとその国民は、ウクライナとの連帯を表明。「隣の独裁者」を侮蔑するジェスチャーを見せ、プーチンへの反発も完全に強めている。
例えば、首都ビリニュスのロシア大使館のすぐ外の路上に現れたテキスト(上の写真)を見てみよう。「プーチン、ハーグがあなたを待っている」とある。戦争犯罪を犯した(と現在いわれている)ロシアの指導者に、報いを受けろとあおっているのだ。
この大胆なメッセージは、ストリートアーティストが「落書き」したものではなく、市長のレミギユス・シマシウス自らの依頼で制作されたもの。同じメッセージは、市の中心部にある政府の建物にも書かれているという。なんとも、勇敢な話だ。
これだけではない。2月27日には、ロシアの侵攻に抗議するために何千人もの女性が主要都市に集結。3月5日には、国境の向こう側であるベラルーシからも見えるように、20メートルもの長さのウクライナ国旗を付けた8機の熱気球がビリニュス上空に上げられた。
ウクライナとの「連帯」を表す象徴的なこうしたアクションと連動するように、リトアニア政府は強力な政治的行動を起こしている。欧州連合(EU)の一員として、ロシアとベラルーシに対する制裁を実施。また開放的な難民政策に基づき、紛争から逃れてきたウクライナ人を支援している。
リトアニアは、EUの国々の中でもロシアやベラルーシに対してより厳しい制裁と孤立化措置を強く訴えてきた。ロシアを国際的な銀行システムであるSWIFT(スイフト、国際銀行間通信協会)から切り離すよう加盟国に促し、ウクライナへの侵攻前にロシア軍を受け入れたベラルーシへの制裁を、多くの加盟国に先立ち求めたのもリトアニアだった。
リトアニアは、EU全体が承認した以外でロシアとベラルーシに対する経済制裁の実施するには難しい状況にあった。しかし、欧州高等教育圏からのロシアとベラルーシの追放を提唱したり、ロシアやベラルーシ当局との間の全ての学術や科学に関する協力を打ち切ったりと、ほかの手段も講じている。ロシアはリトアニアにとって最も重要な貿易相手国の一つであるにもかかわらずだ。
地図で見るとリトアニアは二方を敵対国に囲まれているようだが、完全に無防備というわけはない。リトアニアはEUと北大西洋条約機構(NATO)の軍事同盟のメンバーであり、加盟国の集団防衛の原則を定めているNATO条約第5条の影響下にある。この条約では、一つの加盟国への攻撃であっても、加盟国全てに対するものと見なされる。ロシアによるリトアニアへの攻撃は、より広範囲に問題を広げることが明白なため、回避できているわけだ。
いずれにせよ、リトアニアの大胆な抗議運動は、小国であってもロシアの侵略に立ち向かえること、そしてウクライナの人々を支援するために自分たちもできることがあることを示すものといえる。
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