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世田谷区豪徳寺にある旧尾崎行雄邸を保存させようというクラウドファンディングがMOTION GALLEYのウェブサイトでスタートした。100年以上前に建てられた明治建築だけに、補修や保存するためには1億円は必要だという。目標額は1,234万円だ。
2020年夏に解体する予定だったところを住民の強い意志により中断し、賛同者の一時融資を受けて住宅メーカーから買い取り、修復し活用する方向に進んでいる。今回のクラウドファンディングは、グランドジャンプで掲載中のコミック『世田谷イチ古い洋館の家主になる』の著者である漫画家の山下和美によるものだ。
空色のこのかわいらしい洋館は、東京市長であった尾崎行雄が英国育ちのテオドラを妻に迎えた1907(明治40)年ごろに、麻布に建てた英国風洋館であるといわれていた。しかし今回、調査した結果、建てられたのはさらに古い1888(明治21)年 という記録が出てきたという。
おそらく江戸時代に生まれた職人が手がけ、大正の大震災や昭和の戦禍を越えてきたこの洋館。「人生の本舞台は常に将来にあり」とうたい、憲政の神様といわれた尾崎行雄の思いを次世代へとつなげるべく、今後は近隣の人たちが気軽に立ち寄り、館内や窓の風景を楽しめるカフェやフォトスタジオにする構想もある。
支援方法は、山下和美のイラスト付き感謝状が贈られる3,000円のダイレクト支援から、プロジェクトメンバーである漫画家・笹生那実のサイン入り高精密複製原画の8000円コース、山下和美の複製掛軸5万円コースまでさまざま。すでに100万円のコースは売り切れだという。補修前の洋館の間取り図面をモチーフにしたバンダナ、イラスト入りクリアファイルなど、賛同したクリエーターによるオリジナルグッズはいずれもユニークだ。5,000円以上支援をした希望者には、山下和美の単行本に名前が記載されるという特典もある。
世田谷区で一番古い、都内でも5本の指に入る歴史ある洋館の存続をサポートし、心の「別邸」を持つなんて夢がある。しかし、個人が所有しているだけでは、いずれ相続などの様々な問題に直面し、再び解体の危機が訪れる。活用できる施設にすることで、それを防ぎ、次世代へとつなげることが可能になる。空間として生かし、活用をともに考える一歩となり得るプロジェクトだ。
旧尾崎邸保存プロジェクトのクラウドファンディングページはこちら
テキスト:間庭典子
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