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例年より少し遅い紅葉の見頃を迎えようとしている京都で、建築好きにも映像好きにも魅力的なイベント「京都建築映像祭 2023」が開催されている。
今年で3回目となる「京都建築映像祭(KAFF)」は、「Kyotographie」や「Kyoto Experiment」をはじめ、素晴らしい文化イベントがめじろ押しの京都にあっては知名度や規模の点でこそまだまだ発展段階ではあるものの、初回の2021年にはフランスを拠点に活動する映像作家ベカ&ルモワンヌが、日本を代表する建築家の西沢立衛に取材したドキュメンタリー「TOKYO RIDE」を日本初上映するなど、どちらかというと玄人向けの刺激的なプログラムを毎度提供している。
プログラムディレクターを務める写真家の田村尚子は、「医者」と「患者」の関係を捉え直すことで精神病院の在り方に一石を投じたフランスのラ・ボルド病院を撮影した写真集「ソローニュの森」などで国際的にも高い評価を得ている。
ラ・ボルド病院は、哲学者ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze)との一連の著作で現代思想の流れを大きく変えた精神科医フェリックス・ガタリ(Félix Guattari)が終生関わり続けたことでも知られる伝説的な病院だ。「ソローニュの森」においてもすでに見られた写真と建築の関係に対する田村自身の関心が、実践の場として展開されているのが「京都建築映像祭」といえよう。
本展は、京都市京セラ美術館開館1周年記念「モダン建築の京都」展の関連プログラムとして開催された、第1回ル・コルビュジエの未来志向な集合住宅「ユニテ・ダビタシオン」やメタボリズム建築に光を当てた第2回に続いて、今回は「未完の空間|建築とアーカイブ」と銘打ち、建築や都市、空間のアーカイブについて、国内外の作家や研究者を招いて思考を巡らせる。
2023年11月24日には、アーカイブの一つの形として、建築にまつわる書籍をオリジナルのコーヒーとともに楽しめるライブラリー空間「KAFFライブラリー|本の空間」が、四条烏丸のビル一室にオープンした。
優れた耐久性や環境への負荷の軽さなどから、木造の高層建築の材料としても注目を浴びているCLT(直交集成板)材を用いた什器に並ぶのは、ルイス・カーン建築の研究でも知られた故・前田忠直(京都大学名誉教授)の貴重な蔵書をはじめ、美術書や建築書籍を中心にセレクトされた稀覯本および関連書籍など。
12月10日(日)までとなる会期中には、CLT材の可能性についてのトークイベントや、12月2日(土)に新大宮広場で野外上映を行うシンガポールの映像作家によるレクチャーなどのイベントも、同所で開催予定だ。
メインコンテンツの一つとして注目したいのが、リトアニアの現代美術作家ダイニュス・リシュケーヴィチュスによる作品「The Moden Flat」だろう。リトアニア代表として「ヴェネツィア・ビエンナーレ」への参加経験もあるリシュケーヴィチュスによって2023年に作られた同作は、作家自身や家族の日常的な生活と創作の風景が入り混じり、それらが展開する舞台である家そのものが主役となるような実験的なドキュメンタリー作品だ。
リトアニア出身の映像作家というとジョナス・メカス(Jonas Mekas)が真っ先に思い起こされるが、ほぼ半世紀の隔たりのある1970年生まれのリシュケーヴィチュスによる日本初公開の新作にも期待が高まる。12月9日(土)、京都国立近代美術館の講堂にて上映。
そのほか、12月中旬には通常では非公開の茶室(重要文化財)での拝観および茶会など、関連イベントが予定されているので、詳しくは公式ウェブサイトをチェックしてほしい。
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