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世界的建築家である藤森照信が設計した日本初の宿泊施設「小泊フジ(Fuji)」が、長野県諏訪郡富士見町に2023年8月20日、開業した。藤森は長野県出身。彼が手がけるおとぎ話の中に出てくるような唯一無二の建物は「藤森建築」と呼ばれ、世界でも注目されている。
宿は、富士山、八ケ岳、甲斐駒ヶ岳を望む4000平方メートルの敷地に建設。小さな水田と気持ちのいい庭が広がり、春には小高い丘に枝垂れ桜が咲く。客室面積は63平方メートルの長細い平屋の旅館で、室内は壁をしっくい、床や家具などはクリの材を使用。銅板の屋根の上には富士桜の木が植えられ、外壁は焼杉の板で覆われており、藤森建築の最大のテーマである「自然との調和」が体現されている。
コンセプトは「いのちの中で呼吸する」。里山の風景にゆっくりと心を満たす滞在を目的とし、宿泊は1日1組限定(定員5人)だ。ミニキッチンが付いているほか、チェックイン後に施設スタッフは常駐しないので、完全にプライベートな空間で藤森建築の世界観を堪能できる。
家具のデザインも藤森が手がけているほか、併設された宿泊者専用のパントリーストア(売店)では、地元の食品や酒なども購入できる。
株式会社のちのち代表取締役の山越典子が藤森にほれ込み、宿泊施設の設計を依頼したのが2010年。構想13年目にしてついに開業となった。建設に併せて、2022年11月にはクラウドファンディングも実施。銅板屋根の施工費用として目標510万円に対して1,000万円を超える支援を達成した。屋根に貼る手曲げの銅板や外壁の焼杉は、クラウドファンディングのリターンとしてワークショップを行い、延べ150人の協力を得て作り上げた。
藤森の建築は、仕上げ作業に一般の人が関わることで知られている。これは、著名な建築家の作品ではかなり珍しい。藤森は、「建築現場にはいろんな仕事がある、誰にでも何かしら関われるし、自分が全体の中の何をしているかが一目で分かるから面白い」と語る。今後は、宿泊記念として客が寝室の天井に小さな炭のピースを貼り付ける体験も行っていく予定だ。2024年8月までを予定しており、約1年かけて仕上げていくという。
1棟貸し切りの基本料金は6万6,000円から。加えて大人8,800円、中学生5,500円、小学生3,300円、小学生以下無料(セルフサービス式の朝食付き)がかかる。季節変動があるので詳細は公式ウェブサイトを確認してほしい。
今後はさらに、建物が周囲の環境に溶け込んでいくよう敷地内の稲田を復活させ、植樹を行い、ゆっくりと完成を目指していくそうだ。 国内初の「泊まれる藤森建築」で、自然の中に生きる喜びを体感してみては。
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