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ハイヒールを履いた僧侶が著書で伝える「自己肯定感」の高め方

僧侶でメイクアップアーティスト、LGBTQ+の活動家として活躍する西村宏堂の自伝

Emma Steen
テキスト:
Emma Steen
Former writer, Time Out Tokyo
Kodo Nishimura
Photo: Ibuki
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新年の抱負として「今年こそは家を片付ける」「ヘルシーな食事を増やす」といったスローガンを掲げている人は多い。もしも「自分のことをもっと好きになりたい」という抱負を立てているなら、西村宏堂の言葉に耳を傾けてみよう。

僧侶でメイクアップアーティスト、LGBTQ+の当事者であり、自身の体験を踏まえた視点をグローバルに発信する西村は、2021年『TIME』誌のNEXT GENERATION LEADERS(次世代のリーダー)に選出された「時の人」だ。ここ最近ではNetflixの『Queer Eye』へのゲスト出演を果たすなど多岐にわたる活躍をしているが、現在の地位を築くまでにはたくさんの障害があったという。

Kodo Nishimura

寺の住職の息子として育った西村は、幼少期から違和感を覚えながら育ったという。頭をそって父親の跡を継ぐのだろうと思われる一方で、幼い西村は長い髪をなびかせて、ディズニープリンセスになることに憧れていた。高校時代は、美術の授業に夢中になった。大学入試に関係のない科目に没頭する西村の姿に、同級生たちは戸惑っていたという。

Kodo Nishimura

美術の道へ進むことを選んだ西村は、ニューヨークのパーソンズ美術大学に進学。アメリカに渡ったことで周りの目を気にすることはなくなり、美術学校では同級生の多くがゲイであることを公言していることに、安心感を覚えた。しかし次第に、自分が有色人のマイノリティーであることにコンプレックスを抱くようになったという。

当時のことを「自分の日本人らしい外見の特徴、特に小さな目のことをコンプレックスに感じました。自分が劣っているように思い、自分が日本人であることに悩み始めたんです」と語る。そして同時に、両親にどのようにカミングアウトするか、心の葛藤があったという。

Kodo Nishimura

西村はメイクアップアーティストとしてフルタイムで働きながら、仏教の僧侶になるために修行し、ニューヨークと日本で2年間を過ごした。27歳になる頃には修行を終え、両親にカミングアウト。同時に『ミス・ユニバース』の舞台裏で働くという夢も実現させていた。

Kodo Nishimura
Photo: Courtesy of Kodo Nishimura

著書『正々堂々 私が好きな私で生きていいんだ』(2020年7月発売)は、そんな西村が仏教の教えを交えながら自己啓発を行う自伝だ。本書では「仏教の教えを学ぶには自分のアイデンティティーに向き合い、自分に自信を持つことが必要だった」とつづる。

仏教の実践修行である八正道や瞑想(めいそう)についても詳しく書かれているが、西村のアドバイスは決して堅苦しいものではない。自分のコンプレックスを率直に語り、長所と同じように弱い部分にも自信を持つことの重要性を説いている。

Kodo Nishimura
Photo: Keisuke Tanigawa

西村の平等とエンパワーメントの哲学は、LGBTQ+コミュニティーのメンバーにも深いメッセージを与える。

「私はLGBTQ+であることを誇りに思い、贈り物のように感じています。同時に自分がどこに当てはまるかをはっきりさせようとすると、どのカテゴリーにも属さないことに気付いたのです」

枠にはめられることなく自信を持って生きていい。「あなたが誰であっても、私たちは平等に救済される」という西村の言葉は、私たちを元気づけてくれる。

Kodo nishimura
Photo: Masaki Sato

「誇りを持って自分らしく生きたい」。もしそう感じているならば、ぜひ本書を手にとってみてほしい。ありのままの自分を受け入れるきっかけとなるはずだ。

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