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写真に生きた木村伊兵衛、没後50年展が東京都写真美術館にて開催

ライカの名手が捉えたアンリ・カルティエ=ブレッソンの姿も

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる
Photo: Kisa Toyoshima
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日本の写真史に大きな足跡を残した写真家、木村伊兵衛(きむら・いへい)の没後50年展「没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる」が、恵比寿の「東京都写真美術館」にて開催されている。会期は2024年5月12日(日)まで。また会期中には、写真家の高木こずえやハービー・山口が登壇するトークイベントなども予定されている。

没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる
Photo: Kisa Toyoshima

1901年、東京の下町に生まれ、幼少期からおもちゃのカメラで遊んだという木村は、1920年代に実用化が始まったばかりの小型カメラに写真表現の可能性をいち早く見いだし、日常の場面を素早く捉えた自然なスナップショットなどで名声を確立する。ドイツ製のカメラ「ライカ」を愛用し、「ライカ使いの名手」として1974年に没するまで、日本のリアリズム写真界をけん引した。

没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる
Photo: Kisa Toyoshima「第2章 肖像と舞台」
没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる
Photo: Kisa Toyoshima「第6章 秋田の民俗」

本展は、木村の評価を確実なものとした戦前の沖縄での一連の作品を集めた「第1章 夢の島――沖縄」をはじめ、ポートレートを扱う「第2章 肖像と舞台」、20年もの間通い続けた「第6章 秋田の民俗」など、テーマごとに異なる全7章から構成される。「第4章 ヨーロッパの旅」では、20世紀を代表する写真家、アンリ・カルティエ=ブレッソン(Henri Cartier-Bresson)にも出会い、自身の写真への向き合い方を再確認する旅となった1954年の渡欧をはじめ、数回にわたり訪れたヨーロッパ各地での作品が特集されている。

やはりスナップ写真で有名なカルティエ=ブレッソンになぞらえられ「和製ブレッソン」と呼ばれることすらあった木村だが、本展には、木村が1954年のパリで当のカルティエ=ブレッソンを捉えた有名な写真も出品されている。少しはにかむような笑みを浮かべて、こちらに視線を向けるカルティエ=ブレッソン。右足を引いてカメラを両手で抱えているのは、まさに今から撮影しようとしているところだろうか。

没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる
Photo: Kisa Toyoshima「第4章 ヨーロッパの旅」

カルティエ=ブレッソン自身は写真に撮られることを極端に嫌ったというので、このスナップも木村の不意打ちのような一瞬の早業によって生まれたものなのかもしれない。ライカを操る木村の確かな技術や観察眼とともに、2人の人柄がじんわりと伝わってくるような写真だ。

没後50年に合わせた本展の特徴として、「ニコンサロン」での生前最後の個展「中国の旅」(1972〜1973)の展示プリントが最近発見されたことに伴い、同プリントが特別公開されている点が挙げられよう。戦前戦後にわたってしばしば中国本土を訪れた木村。1943年に出版された写真集「王道楽土」は、時節柄タイトルこそ物々しいが、そこに写し出されているのは、生き生きとした庶民の顔であり生活であって、国威発揚的な雰囲気はみじんも感じられない。

没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる
Photo: Kisa Toyoshima
没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる
Photo: Kisa Toyoshima「第3章 昭和の列島風景」
没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる
Photo: Kisa Toyoshima「第4章 ヨーロッパの旅」

にぎやかな東京の下町であれ、独特の文化を色濃く残す戦前の沖縄であれ、中国や欧米であれ、木村のまなざしがいつも捉えていたのは、どんな場所でもしたたかに暮らす人々の、つましくも生命力に満ちた愛すべき生活だ。「写真に生き」たライカの名手が切り取った、雄弁な一瞬の数々を楽しんでほしい。

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