[title]
このほど『楳図かずお大美術展』が開幕した。2022年3月25日(金)まで、六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)で開催中だ。

楳図かずおは1936年に和歌山県高野山で生まれた。小学校4年で漫画を描き始め、高校3年の時に単行本を出版し、デビュー。『へび少女』『猫目小僧』などのヒットにより「ホラー漫画の神様」と呼ばれるようになる。その後も、『漂流教室』『まことちゃん』『おろち』など数多くの人気作品を生み出し「恐怖マンガ」のパイオニアと称されるほか、タレント、歌手、映画監督などの顔も持つ。

同展は、今年86歳を迎える楳図の「比類なき芸術性」にフォーカス。楳図の作品だけを展示する「回顧展」ではなく、気鋭のアーティストとともに「楳図かずおの世界」を表現することで、楳図の芸術家としての一面を見せる。
会場に入るとまず、『漂流教室』の印象的なシーンが紹介されていた。現代につながるキーワードがいくつもちりばめられていることに驚きを禁じ得ない。

続くフロアには、テクノロジーについての作品を発表しているエキソニモが制作した『わたしは真悟』をテーマにしたインスタレーションが展示。使用済みケーブルが山積する空間に設置された12台のモニターから、作中場面が映し出される。その借景には、作中で象徴的に登場する東京タワーが使われている。

東京タワーがライトアップする夜は、ひときわ幻想的な空間になりそうだ。『わたしは真悟』が描かれたのは1980年代だが、仮に真悟がネットワーク文化の現代に生きていたらというテーマも含まれている。
鴻池朋子(こうのいけ・ともこ)は、楳図漫画に象徴的に登場する非常階段と『14歳』の終盤に登場する「ゴキンチの先生」の顔を重りとして作られた振り子などを組み合わせて構成するトータルインスタレーション、『かずお14歳』を制作。楳図が現在を生きる14歳だったとしたらどんな少年だったのだろうか、という思いが伝わってくるようなインスタレーションだ。


そしてハイライトともなるのが、楳図が制作に4年の期間を費やした、27年ぶりの新作『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』の原画101点。作品はまず鉛筆で描かれ、そのコピーにアクリル絵具で着彩を施した。同展ではこの着彩画と、着彩前の素描の両方を展示する。

同作は『わたしは真悟』の時空を超えた「パラレル・ビジョン(並行世界)」という位置づけ。連作で物語性は有しているが、1枚1枚が絵画作品として制作され、それぞれタイトルが付けられている。新作の中身はもちろんだが、赤と緑を基調とした額物にも楳図のこだわりが見え隠れする。原画を引き渡す際の、楳図本人の解説を記録した映像も興味深い。

同作が着彩される前の素描(鉛筆画)101点を展示する部屋全体の演出を手がけたのは、アートフロントギャラリーのアーティスト冨安由真(とみやす・ゆま)だ。部屋の中央には、冨安が作品からインスピレーションを受けて制作した小屋のような構造物を配置。素描のモノクロームな世界は5分周期で、光と影が入れ子状になって交互に浮かび上がる。
会場には特設ショップも登場。新作『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』や過去の楳図作品のビジュアルを使ったアイテムやグラフィックデザイナー吉田ユニとのコラボレーションアイテムをはじめ、会場限定のオリジナルグッズを含む約190種類が登場する。同展オリジナルの「ガチャ」も用意されていた。

さらに、楳図作品とのコラボメニューを提供するUMEZZ CAFEもオープンする。
『楳図かずお 大美術展』は3月25日まで、東京シティービューで開催。事前予約制なので、訪れる際は注意してほしい。展示の詳細はこちら。
関連記事
『東京のベストを選ぶ、Time Out Love Local Awardsノミネートが開始』
『愛知に22年秋開業、ジブリパークについてこれまでに分かっていること』
『虎ノ門の新横丁「小虎小路」ではしご酒へ、東京初出店も多数』
『Chim↑Pomが森美術館内に託児所を開設、クラファン実施中』
東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら