[title]
日本唯一の遊郭(ゆうかく)・赤線関連の書籍を扱う専門書店「カストリ書房」が、浅草から徒歩10分圏内にある「吉原弁財天」前に移転オープン。2016年に開業し、今回実店舗を閉店する予定だったが、遊郭の歴史を伝えたいという店主・渡辺豪の強い思いにより、新たな店舗として生まれ変わった。
新店舗は浅草から近い場所に位置しているため、観光や浅草寺に参拝の際にもふらっと立ち寄ることができる。店主の渡辺によると、旧店舗と同じく、女性客が全体の8割を占めているが、幅広い世代の人たちが訪れているとのこと。また、従来の書店としてのスペースに加えてカフェ&バーを併設したことから、近所の人や浅草で働く芸者なども休息の場として足を運んでいるという。
カフェ&バースペースは客が横並びで座るため、つながりが自然と生まれやすいのも特徴だ。渡辺は「遊郭の話をすると誤解されてしまうことも珍しくありません。なので、ここでは女性も安心して会話ができる場を提供したいです」と話した。
書店としてはもちろん、遊郭の歴史にアプローチしたイベントなども展開している。10月は「パンパンガール」(米軍を相手に売春していた女性たち)をテーマにした金ちゃんの紙芝居「ハニーさんの一日」や、浅草山谷エリアに実店舗をオープンする予定の生花業「サンジョルディ(SANT JORDI)」による花のポップアップなどを開催。本だけでなく、カストリ書房で扱うさまざまなものを通して、遊郭を知ることができる。
遊郭の歴史を伝える活動の一環として、渡辺による「吉原ガイド」も実施。浅草から吉原遊郭までの実際のルートをたどるコースと、カストリ書房をゴールとして吉原から遊郭に関連する史跡を見ながら歩くコースの2つから選べる。吉原ガイドについて、渡辺は次のように語ってくれた。
「たくさんの本の中から、自分の欲しいものを見つけるのは難しい作業です。実際に吉原を歩いてみることで、300年前にここで働いていた女性がいたことや当時の建物を想像し、自分の興味の輪郭がはっきりしてくると思います。足場を持つことで、お客さんの輪郭の焦点を合わせるお手伝いができれば幸いです」
渡辺自身が作成する月刊新聞「カストリ新聞」にも注目したい。渡辺の取材記、吉原案内、4コマ漫画など、さまざまな内容が掲載されている。店頭では無料で配布、オンラインでは100円で販売。さらに、エントランス付近にはしおりやステッカー、キーホルダーなどの雑貨も置かれる。
カストリ書房は、戦後12年間しか存在しなかった売春街「赤線」の歴史を伝え続けている。かつての遊郭跡地を訪れ、そこに生きてきた人たちの思いに触れてみては。
関連記事
『カストリ書房』
『吉原遊郭の歴史伝える専門書店「カストリ書房」が移転、店主の渡辺豪に歩みを聞く』
『都内銭湯を100円で利用できる「東京1010クーポン」が配布スタート』
東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら