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芸者の街の老舗喫茶「カド」、4月5日に壁が崩落

4月8日から営業再開が決定、向島の名店の物語は続く

Mari Hiratsuka
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Mari Hiratsuka
2022年の様子
Photo: Keisuke Tanigawa2022年の様子
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※本記事は2023年4月5日取材時の情報になる。8日から営業再開が決定、実質さよなら営業になるようだ。

1958年の創業以来、東京きっての花街・向島で芸者や近隣に住む人たちから愛される喫茶店「カド」。天井や壁一面に描かれた西洋絵画やシャンデリアが印象的で、それを志賀直哉の弟に当たる志賀直三が手がけたということからも知られる老舗だ。

別取材でたまたま向島を訪れていた筆者は、せっかくならば寄りたいと思い、店を探すもなかなか見つからない。「閉店したのかな?」と少し残念な気持ちでいると、大変なことが起きていた。店の看板は取り外され、建物2階の壁は崩落。修復作業をする人たちが店を取り囲んでいたのだ。

季節の生ジュースとくるみパンの店 カド
Photo:Kisa Toyoshima4月5日、店を修復する人たちの様子

その光景を眺めていると、店主が「中は大丈夫!」と好意で迎え入れてくれた。事情を尋ねると、「朝は普通に営業をしていたんですよ。数時間前に急に崩れて、幸い怪我人は出ませんでした」と話す。

「昨年から建物の老朽化を理由に退去を迫られていたこともあり、2023年にはこの場所での営業は終わりにすることは決めていましたが、こんなあっけない終わりになるとは……」。

季節の生ジュースとくるみパンの店カド
Photo:Kisa Toyoshima店内の様子

季節ごとに入れ替えているという店内の絵画は衣替えしたばかり。「この絵が最後になるのをなんとなく感じていました。初夏のベルエポック。女性が自由で明るかった時代の作品を選びました」と店主。

季節の生ジュースとくるみパンの店 カド
Photo:Kisa Toyoshima看板

目を引く看板は木枠を志賀直三がデザインし、小畠廣志が彫刻をほどこした。

開設したインスタは店の「遺書」

2023年1月に65周年を迎えた同店だが、少しずつ幕引きの準備をしている最中でもあった。昨年公式Instagramを開設し、店主は「店の遺書のようなもの」と称すアカウントから歴史や思い出を発信し始めた

カド
Photo: Keisuke Tanigawa名物の自家製クルミパンを使ったサンドとアロエやセロリ、レモンなどを合わせたヘルシーなドリンク「活性ジュース」

準備をしていたもののあまりにも突然の出来事。「これまでお世話になったお客さんに向けて、さよなら営業はやりたいなと思っていました。現時点ではどうなるかは分からないですが、この状態では厳しいかもしれない。本当に残念」と、心の内を明かした。

季節の生ジュースとくるみパンの店カド
Photo:Kisa Toyoshima季節の生ジュースとくるみパンの店 カドの店主

しかし、まだまだ「カド」の物語は続いていく。向島からは引退するが、移転先の目星は付けたそう。店内の装飾品は全て取り外し、それを生かした新たな空間をじっくりと作り込み1年後のオープンを目指す予定だ。場所に関して店主は「都心からは離れた海の近くかな?」とヒントをくれた。

カド
撮影:店主崩れた直後の様子

※営業に関する最新情報は公式Instagram@fresh_juice_kadoからチェックしてほしい

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