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新春は、誰もが幸せを願う。日本画を専門とした「山種美術館」では、そんな年末年始にふさわしい、長寿や子宝、富や繁栄など、人々の願いが込められた日本美術に焦点を当てた「【特別展】HAPPYな日本美術―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―」が、2025年2月24日(月・祝)まで開催している。古墳時代から近代・現代まで、HAPPY感が満載の日本美術だけを集めた展覧会だ。
見れば福が来るモチーフが大集結
松竹梅や七福神をはじめとしたラッキーモチーフをはじめ、思わず笑みがこぼれるような表情を見せる人物や動物の表現や、見ているだけで心が楽しくなるような幸福感にあふれた情景。本展は、そんな見るものを楽しく幸せな気持ちにさせる力を持った55点の作品群で構成されている。
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まず、2025年は巳(み)年。ヘビや初夢にちなんだ作品も多数出展されている。竹内栖鳳の『艶陽』に登場するヘビは、うろこ一枚一枚がとてもリアルに表されている。穏やかな色合いのヘビと植物は、清々しい気持ちになる新年にぴったりだ。縁起が良さそうな児玉希望の『鯛』は、鮮やかな青と赤、金色が目を引く。
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横山大観の『寿』は、墨で描かれたユニークな造形の文字だけでなく、背景に金泥で松竹梅も描かれ、幸福度が高まる上に力も出てきそうだ。小松均の『赤富士図』は、大迫力の赤い富士が目の前に迫り、貫禄がある。
愛らしくほっこりする動物も
伊藤若冲の『伏見人形図』は、モチーフと色合いともにポップな作品だ。若冲はあまり人物画を描いてこなかったが、この郷土玩具である伏見人形はよく題材にしていたという。現代にも通ずるキャラクターのようでもあり、若冲の画題の幅広さと画家としての非凡な才能も感じるだろう。
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猛々しくない獅子がチョウにおびえる川端龍子の『華曲』では、獅子が何ともとぼけた表情を見せており、思わず笑みがこぼれる。
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渡辺省亭の『葡萄』は、毛の質感まで細かに表されているネズミをじっくりと鑑賞したい。そのほかにも、気持ち良さそうな表情を見せる鶴や、愛らしい子牛に気持ちが和む。
ジャーナリスティックな視点を持つ龍子作品
メインビジュアルにもなっている龍子の『百子図』は、ゾウの周りにうれしそうな表情を見せる子どもたちが集まっている。
1949年、ゾウのいない「上野動物園」に、インドからゾウが贈られた。動物園のスターであるゾウと子どもたちが戯れる平和な光景が描き出された本作は、子孫繁栄を象徴する作品だ。当時のニュースをテーマにした、龍子の終戦直後のジャーナリスティックな視点も感じ取れる。
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ユニークな表情のはにわも展示
最近、注目のはにわも登場。本展のはにわは、小さなイノシシを抱え、狩猟の成功を象徴するような笑った表情を浮かべている。イノシシを飼うことを職業とした「猪飼部」という部民だ。
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その横の『迦陵頻伽像』にも、ぜひ注目してほしい。見てるこちらも楽しくなるような、生き生きとした表情をしている。
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なお、本展に合わせて館内の「カフェ(Cafe)椿」では、オリジナルの和菓子も提供している。ほっこりと気持ちが穏やかになった美術鑑賞の余韻に浸りながら、茶と菓子が楽しめる。
新春は、同館で心温まるひとときを過ごしてほしい。
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