[title]
最も優れたジャパニーズウイスキーを決めるのは困難だというのは、飲んでみるまでもなく明らかなことだ。あらゆるリミテッドエディションボトルや昔のシングルモルトの再販にもかかわらず、良いものは慢性的に品不足にある。 事実、流通している国産のウイスキーは考えられているよりもずっと少ない。
国内には約12の蒸留所があるが、ジャパニーズウイスキーのメーカーはその需要にこの10年ほど追いつけていない。多くの蒸留所では、供給をより長く維持しようと、海外から輸入したウイスキーと自社の製品をブレンドしてきた。こうした方法を採用しているのは日本だけではないが、純粋なジャパニーズウイスキーを好む消費者がそうした事情を見抜くことは大変難しいのもまた事実だ。
スコットランドでは、ほかの国からのウイスキーを混ぜたものを「スコッチ」とは呼ばないが、日本ではこうした公的なジャパニーズウイスキーの定義は今までなかった。このままでは、スコッチウイスキーと焼酎をブレンドする、あるいは海外から輸入したウイスキーを日本でボトリングして、単に「ジャパニーズウイスキー」というラベルを貼ったような節操のない製品への規制がなくなってしまう。
こうした状況は、日本洋酒酒造組合が2021年2月12日に制定した一連の新たな基準によって、変わりつつある。長年にわたる検討の結果、同組合はジャパニーズウイスキーとされるための基準を公表した。詳細な基準は公式ウェブサイトで閲覧できるが、以下でいくつかのポイントを紹介しておきたい。その多くは材料や製法の出どころに関するものだ。
- 糖化、発酵、蒸留は、日本国内の蒸留所で行うこと。
- 含有している麦芽の種類はオオムギ、コムギ、ライムギであること。
- 日本国内で採水された水に限ること。
- 詰めた日から起算して3年以上日本国内で貯蔵すること。
- 日本国内で容器詰めすること。
この新たな基準は2021年4月1日(木)から発効するが、蒸留所は2024年3月31日(日)までは条件付きでこれまでの表示によることができる。この基準に罰則はなく、適用されるのは同組合の事業者のみだ。しかし、同組合に加盟している事業者だけで、カルト的な人気を誇る『イチローズモルト』で知られるベンチャーウイスキーのような小規模な事業者から、サントリーやニッカといった大企業まで、国内の蒸留所のほとんどを占めている。需要に応えるために製造されるスピリッツは依然として「ウイスキー」と呼称されるが、「ジャパニーズウイスキー」を名乗ることはできなくなるだろう。
関連記事
『刺激的すぎるアートホテル、BnA Wallが日本橋にオープン』
『再びの緊急事態宣言を受け、レストランSioが開始した朝ディナーとは』