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東京都美術館で「イサム・ノグチ 発見の道」を楽しむ3のこと

8月29日まで、150灯もの光のインスタレーションなどを展示

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Time Out Tokyo Editors
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世界的な彫刻家、イサム・ノグチ(1904〜1988年)の大規模な回顧展『イサム・ノグチ 発見の道』が、東京都美術館で2021年8月29日(日)まで開催中だ。日本人を父に、米国人を母に生まれたノグチは、舞台芸術やプロダクトデザインなどでも活動しながら、彫刻で独自の造形を作り上げた。

本展は「彫刻の宇宙」「かろみの世界」「石の庭」の3章から成る。国内外の大型彫刻など約90点の作品が集結し、ノグチがさまざまな発見の道を歩みながら、「彫刻とは何か」を追求した過程を見直そうと試みる。本記事では、各章に沿って3つの見どころを紹介していきたい。

1.  過去と現在の隔たりを測る。

第1章「彫刻の宇宙」では、ノグチのライフワークで、太陽と月に見立てた光の彫刻『あかり』を150灯も使ったインスタレーションを展示室の中心に据えながら、1940年代から最晩年の1980年代の作品を紹介。その中には、現代の私たちには当たり前に見えても、当時は評価が分かれていた作品もあり、ノグチの造形が、時代と地域の両方を超えて広がりを影響を持っていたことを実感できるはずだ。

『あかり』は岐阜提灯(ちょうちん)に着想を得て1951年に制作が始められ、現在まで発売されている。ノグチが1983年のベネチアビエンナーレに出品した時にはプロダクトデザインとしてあまり高い評価を得られなかったというエピソードは、私たちには隔世の感もある一方で、この作品の息の長さをも物語っている。

イサム・ノグチ
Photo: Keisuke Tanigawa

『ヴォイド』は、「全てのものの存在する場所」という意味を持つ仏教用語「虚空」に対するノグチのイメージが制作の出発点。1970年から多様な素材とサイズにより、同名の連作を手がけたという。

イサム・ノグチ
画面手前が『ヴォイド』(1980年鋳造)、Photo: Keisuke Tanigawa

仏教的なイメージが原点にあるとはいえ、『ヴォイド』に見られる「穴」や「輪」といった造形語彙(ごい)、立体に穴を穿(うが)つという行為は、ヘンリー・ムーアやバーバラ・ヘップワース、あるいは岡本太郎、八木一夫らのそれと比較してみると面白いだろう。

2. 「彫刻とは何か」を考える。

第2章「かろみの世界」では、ノグチの彫刻と、それに示唆を与え続けた日本文化が見せる「軽さ」の関係を探っているが、彫刻の在り方を常に考えてきたノグチの関心がさまざまな形で表れてもいる。自分なりにノグチと共有できる彫刻の楽しみ方を探してほしい。

最晩年に制作された『リス』は折り紙のような造形が特徴的だ。ある角度から見ると一枚板のリスなのだが、実際には折りたたまれた金属板でできている。平面と立体の間を模索しているかのような造形は、生涯を通して彫刻にさまざまな問いを投げかけていたノグチらしい作品と言えよう。

イサム・ノグチ
画面中央が『リス』、Photo: Keisuke Tanigawa

ほかにも、リズミカルに上昇する形態が楽しい『チャイニーズ・スリーヴ』なども見ておきたい。表面に細かく刻まれた凹凸がそのリズムに呼応するかのように見えだすと、実に細かい芸の作品だと気付かされる。この当時すでに離婚していた元配偶者の李香蘭こと山口淑子との関係を想像してもいいだろう。

 3. 最晩年の境地を体験する。

ノグチはニューヨークと香川県高松市牟礼(むれ)町にアトリエを構え、往還しながら制作に取り組んでおり、現在両方の場所でイサム・ノグチ庭園美術館が開館している。第3章「石の庭」では、牟礼の野外アトリエで石匠の和泉正敏と共に作り上げた晩年の彫刻を、館外で初展示する。

まず素直に驚かされるのは、それぞれの作品の配置などには随分気を遣ったであろうということだ。非常に重い石の彫刻であるので、その位置を微調整するのはとても大変だったはずである。率直にスタッフの努力に敬意を払おう。

イサム・ノグチ
Photo: Keisuke Tanigawa

「石の庭」というタイトルにも着目しておきたい。表向きは牟礼のノグチの彫刻による庭園を意味しているが、ノグチは牟礼以前にも京都を巡り、大徳寺の石庭や西芳寺などの庭園に触れていることも踏まえているのではないだろうか。牟礼の庭園には西芳寺の一隅を模した造形があることも指摘されているからだ。その意味で、日本自体をキーワードにした「かろみの世界」とうまくつながっている展示と言える。

作品で注目しておきたいのは、『ねじれた柱』に見られるように、手を加えつつも石本来の要素を残すという点であろう。『無題』は、大小2つの石の組み合わせに見えるが、実際には1つの石から成る見る位置や距離によって表情が大きく変わるので、周囲を回りながらフォルムの美しさや伸びやかさを楽しみたい。

イサム・ノグチ
画面中央が『ねじれた柱』、Photo: Keisuke Tanigawa
イサム・ノグチ
画面手前が『無題』、Photo: Keisuke Tanigawa

牟礼を実際に訪れることができなくとも、当地を紹介する映像も視聴できる。映像を見た後で、石の中に身を置いて、雰囲気を想像してみるのも楽しいはずだ。

『イサム・ノグチ 発見の道』の詳細はこちら

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