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今年の『東京オリンピック・パラリンピック』は、アジアの都市で初の2回開催、史上初の延期、そして初の無観客など、初めてのことがたくさんある。2020年以前に誰もが予測していた状況ではないが、ようやく2021年7月23日に東京オリンピックの開会式を迎えることができた。
開会式には、オリンピックの名誉総裁に就任した天皇陛下が登場。VIPを除く観客の入場は禁止されていたが、隈研吾が設計した新国立競技場で打ち上げられた花火が、東京の夜空を眺める人々にイベントの開始を知らせた。
式典の冒頭では、新型コロナウイルスの大流行で失われた命と、2011年の東北地方太平洋沖地震と津波の犠牲者への追悼が行われ、ほろ苦い雰囲気に包まれる。しかし、国際的なアスリートのパレード、日本を代表するパフォーマンス、息を飲むようなドローンの飛行などにより、イベントは急速に盛り上がっていった。
最初のパフォーマンスでは、日本が得意とするデジタルアートとプロジェクションマッピングの映像で四季の移ろう様が描かれた。そして、医療現場の最前線で活躍する看護師でボクサーの津端ありさがランニングマシンの上でジョギング。その後ろでダンサーらがロープを複雑に絡め合って、不安や葛藤など選手たちを襲う心の内を表現した。
続いて、シンガーソングライターのMISIAが国歌『君が代』を歌う。綿菓子のような衣装は印象的であった。国歌斉唱の後は、大工にふんした俳優やダンサーらが登場し、江戸時代より伝わる労働歌『木遣(きや)り唄』をタップダンス、パーカッションなどを組み合わせたインタープリタティブダンスとして披露。パフォーマンスの中では、大きな木製のオリンピックリングが完成した。
入場行進は、オリンピック発祥の地であるギリシャの選手たちが先頭で開始。次に難民選手団が続くと「あいうえお順」で各国の選手団が入場していった。入場行進曲には『ファイナルファンタジー』や『モンスターハンター』『ドラゴンクエスト』など、日本で開発されたゲームのテーマ曲が使用され、オーケストラが演奏していたことも興味深い。
そして、2016年のリオデジャネイロオリンピックの開会式でショーを飾ったテコンドー選手のピタ・タウファトフアが、シャツを脱ぎ、適度にオイルを塗ってトンガの国旗を持って戻ってきたことは、世界中の観客を喜ばせた。
最後に入場したのは、2024年に次の夏季オリンピックが開催されるフランスと日本の選手団。旗手の八村塁と佐々木唯が先頭を歩いた。各国の代表選手約6000人全員が入場すると、オリンピックのスローガンである「Faster, Higher, Stronger, Together(より速く、より高く、より強く、ともに)」が掲げられ、イベントの背後にある「一体感」を強調した。
開会式のハイライトを1つ挙げるとすれば、スタジアムの上空に真っ青な球体を形成した、SF映画から抜け出してきたかのようなドローンの演出だろう。1824台のドローンが、東京オリンピックのロゴを巨大な3Dで表現した後、地球に姿を変えたのだ。それは、まさに驚きの瞬間だった。
ジョン・レノンの『イマジン』に合わせ、感動的なモンタージュが流れた後、国際オリンピック委員会(IOC)会長のトーマス・バッハと組織委員会会長の橋本聖子が、「オリンピックを開催し、参加することの意味」についてスピーチした。バッハは、世界的なパンデミックの中で直面している未曽有の課題を指摘し、これは謙虚な経験であると話した。
スピーチの後は、青と白のウエアを着たパフォーマーが全50競技のピクトグラムを実写版として次々に披露する想像力豊かなデモンストレーションが行われ、まるで日本のテレビゲームのような、滑稽でウィットに富んだパフォーマンスで、会場の雰囲気を和ませた。
続いて、照明技師にふんしたコメディアンの劇団ひとりがスイッチを入れて東京の各名所や日本各地の名所をライトアップする様子がカメラに映し出される。スタジアムに戻ると、歌舞伎役者の市川海老蔵と日本を代表するジャズピアニストの上原ひろみが、日本の伝統芸能とモダンジャズの融合を披露した。
式典のフィナーレを飾ったのは、テニス選手の大坂なおみ。これまでのオリンピックに対するさまざまな反応や、抗議活動にもかかわらず、大坂が階段を上って火を灯し観客に振り向くと、街は一斉に息を吐き返したかのようだった。
長い道のりではあったが、最後の花火が夜空に舞い上がると、史上最も歴史的なオリンピックになるであろうという期待を抱かずにはいられなかった。
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