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ロンドンの人たちは、歩道で常に熾烈(しれつ)な駆け引きをしていることを自覚している。この街では、もたもたして歩いていると、痛い目に遭うことも多い。
早く歩きたい我々の妨げになるのが、横断歩道での信号待ち。なかなか「青」にならない信号ほど、イライラすることはない。
そんな市民のスピーディーな移動への欲求を満たすため(そして、人々の安全を守るため)、ロンドン交通局(TfL)は2021年5月から、横断歩道における「歩行者優先」運用を、市内18カ所で試験的に導入している。これらの場所では、人が道路を渡るため信号が変わるのを待つ代わりに、横断歩道は常時「青」にし、センサーが近くに車を検知した時だけ「赤」になるようにした。
実験では、ドライバーと歩行者の両方にとって、双方の時間を大幅に節約できる素晴らしい結果が得られた。増加した青信号の時間は平均で1日56分となり、歩行者たちが節約できた時間は1日1.3時間だったという。
また、TfLのデータによると、交通量への影響はほとんどなく、歩行者が信号を順守する確率が13%アップ。事故のリスクも減少したそうだ。
この取り組みは、2041年までに路上での全ての死と事故を根絶し、ロンドンの道路をより安全にするというTfLの「ビジョン・ゼロ」計画の一環。TfLが目指しているのは、2019年の交通事故死はゼロだったオスロやヘルシンキといった都市に並ぶことだという。
近年の状況はどうなのだろうか。
2021年、ロンドンの交通事故死者数は75人と過去最低を記録したが、重傷者は増加。パンデミック後に交通量が通常レベルに戻ったのが、一番の原因だと考えられている。TfLの報告書によると、交通事故死の減少率は22%で、負傷者は18%増加となった。最も被害を受けやすかったのは歩行者、自転車、オートバイの利用者だという。
そうした事故を減らすため、信号の実験が成功したことを受けて、TfLは市内全域の横断歩道にこの新しい信号機をどう設置していくかを検討中だ。
ロンドンのウォーキング&サイクリングコミッショナーであるウィル・ノーマンは、2022年頭に「私たちの街をより安全にすることは、より多くの人々が、車から徒歩に乗り換えることを可能にするための鍵となります。この革新的な新技術によって、歩行者にとって横断歩道がより安全で便利になることをうれしく思います。近いうちにほかの場所にも展開され、どんないい結果が得られるか楽しみです」と述べている。
歩行者にも車にもうれしい新しい信号が、一刻も早く増えてほしいと願う。
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