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千葉県市原市、木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市の内房総5市が連携し、官民協同で初めて開催する大規模イベント「百年後芸術祭 ―内房総アートフェス―」。2024年3月23日(土)から5月26日(日)まで、アート作品の展示と、ダンスや音楽ライブがスタートするのを前に、総合プロデューサーの小林武史と、アートディレクター・北川フラムが、報道関係者向けの企画発表会に登場した。内房総の各地に点在する展示スペースや出展作家、パフォーマンスを予定しているミュージシャンらの発表を行った。
「百年後芸術祭」は、千葉県誕生150周年記念事業の一環として、2023年秋にスタートした。百年後の新しい未来を創っていくために、アートやクリエーティブ、テクノロジーの力を融合し、持続可能なプラットフォームとしての芸術祭を目指して活動している。
これまでに音楽・映像・ダンスと、ドローンによる演出が融合したパフォーマンス作品「en Live Art Performance」が、2023年秋、小林が総合プロデュースする木更津市の「クルックフィールズ(KURKKU FIELDS)」で披露され、大きな話題を呼んだ。また、内房総の魅力的な食材を集結させた、食と学びの新たな食体験イベント「EN NICHI BA(エンニチバ)」も開催されている。
「LIFE ART」「LIVE ART」を両軸に展開
49日間にわたって2024年3月23日(土)から5月26日(日)まで開催される本芸術祭は、「LIFE ART」をテーマに約80組の作家が参加するアート作品の展示と、「LIVE ART」を旗印に小林がプロデュースするスペシャルライブ4公演が行われる。
サブタイトルに掲げられた「環境と欲望」ついて小林は、「今さまざまな問題をはらんでいるのは欲望でしょう。問われているのは、欲望を捉え直したり、質を変えたり、工夫することを考え、想像し、表現しながら、新しい次元に向かうこと。100年後というのは、ここにいるほとんどの人がいない未来だからこそ、利他的な感覚が生まれるのでは」と話した。
また、千葉・内房総というエリアで芸術祭を開催する意味を、「東京に隣接し経済成長を支えてきた一方で、自然の力も残っている場所。都市と自然、アートとビジネス、現在と未来、そして環境と欲望、さまざまなカウンターパートを考える場としてもふさわしい」とコメントしている。
アート作品の展示をディレクションする北川は、2014年から市原市で3年に1度開催されてきた芸術祭「いちはらアート×ミックス」の総合ディレクターでもある。今回は5市に点在する展示エリア全てを巡り、そこに暮らす人々の生活、地域の歴史や営みを、アーティストらが作品として表現する構想を語った。
内房総を旅するように楽しみたい展示の数々
アートフェスが開催される内房総の5市は、それぞれに特色と魅力がたっぷりあるエリアだ。東京都内からは少し遠いイメージがあるかもしれないが、例えば木更津市なら、JRなどの鉄道、または東京駅八重洲口や渋谷・品川・新宿から高速バスを利用して約90分で到着できる。
会期中は、JR木更津駅や小湊鉄道の上総牛久駅など、各拠点を結ぶように無料の周遊バスが運行されるほか、土日祝日を中心にランチ付きのオフィシャルガイドツアー(有料)も企画されている。できるだけ多くの地域を巡りながら、その土地ならではの作品と、桜や菜の花、新緑といった内房総の春を満喫してほしい。
ここで、5市それぞれの主な拠点と、出展アーティストを紹介しよう。
木更津市では、KURKKU FIELDSで、草間彌生や名和晃平、Chim↑Pom from Smappa!Group、アニッシュ・カプーア(Anish Kapoor)、オラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)らの作品を展示する。同市にゆかりがあるSIDE COREや小谷元彦、梅田哲也などの作品も展示予定だ。
君津市では、さわひらきが「旧内箕輪保育所」でインスタレーションを、佐藤悠が「八重原公民館」でパフォーマンスを予定している。
袖ケ浦市は、東京湾アクアラインの博物館「アクアラインなるほど館」で韓国を拠点に活動するキム・デボンが、市指定文化財の「旧進藤家住宅」では、千葉を拠点にガラスの立体作品を制作している大貫仁美が展示を行う。
富津市では、千葉出身で、彫刻・絵画・映像・テキストなどのメディアを組み合わせた表現を行う武藤亜希子や、同じく千葉出身で、その土地の人々との協業から作品を表現する五十嵐靖晃や、中﨑透らが「富津市埋立記念館」と「富津公民館」で展示予定だ。
そして、「牛久商店街」や「市原湖畔美術館」など、各拠点に約60作品が点在する市原市では、演出家の多田淳之介が主宰する劇団「東京デスロック」によるパフォーマンスが、上総牛久駅などで行われるなど、注目の展示やイベントがめじろ押しだ。
加えて、芸術祭のスタートとともにグランドオープンする「イチハラアートフィールド(ICHIHARA ART FIELD)」にも注目したい。廃校になった「旧里見小学校」を舞台に、アートと、それらが作られる過程とを同時に見ることができる、新しい形のミュージアムとなる予定だという。
ここでは、「瀬戸内国際芸術祭」にも参加した、食をテーマに活動する現代美術家 EAT&ART TAROによるパフォーマンスや、写真作品などのインスタレーションを手がけるキューバ出身のカルロス・ガライコア(Carlos Garaicoa)、カメルーン出身のエルヴェ・ユンビ(Hervé Youmbi)らによる多彩な作品が展開されるという。
全てが一度限りのスペシャルライブを各地で開催
一方、小林がプロデュースするスペシャルライブは、フランスの詩人でシュルレアリストであるアンドレ・ブルトン(André Breton)の作品「通底器」からヒントを得たという「通底縁劇・通底音劇」をテーマだ。戦争や自然災害などによる物理的な分断などが絶えない中でも、根底ではつながり合える、分かり合えるのでは?という思いが込められているという。
4月に富津市と木更津市で、5月に君津市と袖ケ浦市で開催予定のライブは、会場も出演アーティストの顔ぶれも通常の音楽ライブとは一線を画す、この芸術祭でなければ実現しないようなキャスティングになっている。
例えば、4月6日(土)に富津市の「富津公園ジャンボプール」で開催される「不思議な愛な富津岬」には、シンガーのアイナ・ジ・エンド、ダンサーのアオイヤマダが参加する東京QQQ(サンキュー)が出演。衣装をひびのこづえが手がけ、小林自身もスペシャルバンドとして参加する。
そのほかのライブアーティストも、櫻井和寿やスガシカオ、宮本浩次らと豪華なラインアップ。いずれのスペシャルライブも、アート・パフォーマンスを中心に、さまざまなミュージシャンやダンサー、クリエーターらと、音楽・映像・ダンス、そしてテクノロジーが融合し、新しい芸術表現となるだろう。各公演のチケット料金や発売日は、2月20日(火)からオフィシャルサイトなどで発表予定だ。
アート作品の鑑賞には、全ての会場へ1回ずつ入場できる「作品鑑賞パスポート」の購入が必要だ。芸術祭の公式サイトや各種プレイガイドで手に入れることができる。アートフェスを楽しむための情報が詰まった公式ガイドブックも付いてくるので、チェックしてみてほしい。
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