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香港の元駐在員も足繁く通う香港料理専門店、喜記(ヘイゲイ)が2022年1月26日にリニューアルオープンした。同店は、1965年に香港の銅鑼湾(コーズウェイベイ)で創業した海鮮料理の名店、喜記の中華圏外初の店舗だ。本場のスタイルを踏襲した香港料理、トウガラシとニンニクがきいた「避風塘(ベイフォントン)料理」を提供している。
2017年、銀座6丁目にオープンしたが、この度、店舗面積を拡大するために銀座5丁目にある商業施設、イグジットメルサ(EXITMELSA)のレストランフロアに移転した。
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席数はこれまでの30席から58席へと大幅に拡大。旧店舗は、厨房(ちゅうぼう)が店のほぼ半分を占めており、並ばなければ入れないことも多かったが、そうした心配も解消されそうだ。
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「香港にいるかのような気分を感じてもらいたい」という思いから、店内には随所に在りし日の本店やビクトリア・ハーバーなど新旧の香港の写真が飾られているほか、食器やカトラリーも香港から取り寄せている。
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提供するのは避風塘料理をはじめ、前菜、スープ、点心、麺飯、焼き物、デザートなど。素材も海鮮に限らず、肉類、野菜、豆腐と幅広い。「こだわりは『オール香港料理』ということです。四川麻婆豆腐や北京ダックも扱っていません」と同店を運営する田中コーポレーションの代表、田中紀之は話す。メニューを改めて開いてみると、日本ではあまり見かけない珍しい料理も多い。
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同店の看板メニューの一つが避風塘料理だ。これは香港にあるビクトリア湾の避風塘(台風が近づいた時に船を避難させる場所)に停泊する船上で提供されていた料理で、魚介類にたっぷりのトウガラシとニンニクを入れているのが特徴。現在では香港の多くの店で味わえるが、確立したのは喜記本店といわれている。
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初めて避風塘料理を楽しむなら、本店から空輸されるガーリックスパイスを使用した『マッドクラブのチリガーリック炒め』(6,000円)がいちおしだ。最もおいしいカニの一種として、世界各国で食べられている高級ガニであるマッドクラブは、カラリと揚げることで甘みが際立ち、パワフルな辛味と見事にマッチ。独特の香ばしさが心地よく鼻腔(びこう)を抜ける。
料理長の山崎浩一は「手で身とスパイスを絡めながら食べるのが香港流。汚れを気にせず豪快に楽しんでもらえれば」と話す。彼は、赤坂璃宮の副料理長や香港1997の料理長を経て、香港のマンダリンオリエンタルなどで多彩なキャリアを積んだ人物。香港料理をフルラインアップで提供できるのも、山崎の存在あってこそだろう。
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ランチは9種のセットメニュー(1,300〜5,000円)を用意。おすすめは1日5食限定の『鮮魚の姿蒸しセット』(2,000円)だ。その日に豊洲市場から仕入れた新鮮な魚(取材時はカサゴ)を蒸して、高温のピーナツ油をジュワッと回しかけた一品である。
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骨からするりとほぐれる身はうま味が凝縮し、ふんわりした食感が楽しめる。白髪ネギとショウガの清涼感とも華やかに調和。しょうゆだれは見た目より繊細で、魚本来のおいしさを引き立てている。
セットのスープは香港の定番家庭料理である薬膳スープ、ライスにはジャスミン米を提供するなど、本場のスタイルを踏襲している。プラス300円で点心とデザートを追加することも可能だ。
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ディナーは、7品目で内容が変わるコースを4種類用意。リニューアルに際し『蟹とイクラの香港土鍋炊込みごはん』『鉄板エビチリと黒米おこげ』『広東式ローストダック』など新メニューもあるので、ぜひ試してほしい。
気軽に海外へ行けない今、確かな歴史と技術に裏打ちされたリアルな香港グルメを楽しんでみては。
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