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世界100カ国以上、1万点以上の人形を所蔵する博物館である「横浜人形の家」で、「ひとのかたち」に着目した企画展「ひとはなぜ ひとがたをつくるのか」が開催。古くは土偶や「はにわ」に始まり、こけしなどの郷土玩具や創作人形、さらには昨今ブームのアクリルスタンドに至るまで、「ひとがた」とも読める「人形」を幅広い視点で展示する。
旧石器時代の女性小像など、人形を巡る歴史上のトピックを研究者による解説とともに、クロノロジカルに紹介する展示には、早稲田大学で人気の講義を書籍化した「人形メディア学講義」で知られる菊地浩平らが参加している。また、下肢に遺伝疾患を持つアーティストの工藤千尋による新作や、滋賀県の「やまなみ工房」などの障害者施設で作られる「ひとがた」など、実際の人間が持つ身体の多様さが生む表現の豊かさを感じさせる作品も並ぶ。
中でも注目したいのが、チラシにも使用されている土井典(どい・のり)に関する展示だ。日本における球体関節人形のパイオニアの一人としても知られる美術作家の土井の作品は、澁澤龍彦や寺山修司、土方巽ら、多くの文化人から愛されてきた。土井が表現する、ふくよかに強調された女性の美しさや、反抗的なスタイルは今なお多くのファンを魅了している。
本展では、2017年に没した土井への追悼の意を込めて、トークショーと舞踏公演も開催される。トークショーには、人形文化のみならず、幻想絵画や耽美(たんび)的な文化などを特集してきた雑誌「夜想」の創刊者でもあるグラフィックデザイナーのミルキィ・イソベらが登壇。舞踏公演には、土方の下で学び、1970年代には土井制作のオブジェを舞台美術に踊った経験もある小林嵯峨(こばやし・さが)が出演する。
そのほかにも、自らの身体で土偶を表現する白鳥兄弟によるパフォーマンスや、日本のアウトサイダーアートを発掘・紹介し続けている櫛野展正(くしの・のぶまさ)を招いた特別イベントなど、興味深い関連イベントが多数企画されている。
会期は、2024年4月6日(土)~6月30日(日)。原始の時代から人類が決してやめようとしない「ひとがた」作りの魅力を体感してほしい。
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