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広島県観光連盟(以下、HIT)、ひろしま美術館、株式会社エクスペリサスは、広島県のナイトタイムエコノミーを推進するための取り組み、「HIROSHIMA NIGHT MUSEUM」を2021年4月からひろしま美術館で開催する。これは、観光客が何度も訪れたくなる観光地となるためには、数多くの観光プロダクトを取りそろえておく必要があるという考えから出た試みだ。
今回は、印象派を中心としたフランス近代美術を多数所蔵しているひろしま美術館と連携、ゴッホ、ルノワールなどの魅力を感じてもらうために、美術鑑賞に演劇とインタラクティブ(双方向)の要素を組み込んでいる。全体で1時間程度の演劇作品として設計、同美術館所蔵の作品とその作者をモチーフにしている。作品の作者となった演者が、自身や友人の作品をストーリー仕立てで紹介するというものだ。
演じるのは、地元広島の劇団のグンジョーブタイ、脚本は映画監督で脚本家の一尾直樹が担当し、ひろしま美術館学芸員が監修している。演劇の要素を加えることで、美術館が劇場化し、19世紀後半の印象派が活躍した時代にタイムスリップしたかのような、演劇鑑賞でも美術鑑賞でもない「没入感」を重視した新しいアート体験を目指したという。
あらすじの舞台は、日没を迎えるひろしま美術館。前庭でウェルカムドリンクを楽しんでいる参加者の前にゴッホにふんする役者がランタンを持って現れ、ゴッホ作『ドービニーの庭』に描かれたはずだった黒猫を探しているシーンからスタート。
ゴッホは、アリスティド・マイヨールに案内されて展示室へと誘導され、エドゥアール・マネ、クロード・モネ、ポール・セザンヌ、フィンセント・ファン・ゴッホ、ピエール=オーギュスト・ルノワールの作品を巡っていく。
特徴的なのは、純然たる創作のストーリーではなく、美術史のエピソードをちりばめ、鑑賞の要点も説明してくれるところだろう。例えば、「印象派」という言葉は、モネたちをあざけるために批評家が命名したもので、当時高い評価を得ていたわけではなかったことや、セザンヌが40歳ごろから故郷に引きこもり、孤独な制作活動を開始、「近代絵画の父」と呼ばれるようになったゆえんなどが解説される。
ミューズに導かれて失われた愛猫を探すのは、まるでダンテ『新曲』などを思わせるが、美術館や美術作品になじみがない人でも抵抗なく楽しめるような工夫が凝らされているのは、学芸員の監修と脚本の工夫のおかげだろう。
開催日時は、2021年4月24日(土)、5月8日(土)、15日(土)、6月5日(土)、26日(土)で、18時15分〜20時を予定している。各回20人で料金は5,250円、申し込みは特設サイトから抽選。
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