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東京で今最もチャレンジングな店が集まっている土地、日本橋でまたエッジのきいた商業施設が昨年末ひっそりとオープンした。
2020年12月1日に誕生したグラウンドニホンバシ(GROWND nihonbashi)は、再開発のため2年限定で遊休地となっていた場所にできた3階建てのビルと目の前の空き地を利用したオープンテラス、GROWND Parkから成る複合施設だ。
1階はホットサンド専門店、ホットサンドラボ ミリ。2階がカポックの木の実から出る繊維を使った、環境に優しいオーガニックなダウンウエアショップ、カポックノット。3階には、夜に酒と和菓子のペアリングが楽しめるかんたんなゆめ 日本橋別邸が入居。この店は、ミュージシャンSeihoが渋谷で手がけた革新的な和菓子を提供する、かんたんなゆめの姉妹店。本格始動と同時に通販もスタートさせた。同施設に入居している店舗はいずれもリアルとオンライン双方で購入できる商品を展開している。
一体どんな思いでこの施設を開業したのか、コンセプトや背景、おすすめのポイントを、グラウンドニホンバシを運営しているNODの溝端友輔に話を聞いた。
リアルとオンラインどちらかに依存しない新しい常連の形を生む
「飲食業は駅前立地など客数に依存し、薄利多売で稼ぐことが一般化していて、良いと思った商品を、食べてほしい人に届ける。というシンプルな商売が成り立ちにくい状況になっています」と溝端は語る。そうした状況を打破するために、同施設に入居している全店がリアルな実店舗だけでなく、オンラインでの販売も行っている。「そのバランスはどちらにも依存し過ぎないことを意識している」と溝端。
ここでは、全てではないがオンラインとリアルで同じ商品を注文可能。利用者それぞれの都合に合わせて、良い商品を提供できるように体制を整えている。「実店舗には一度しか行ったことがないけれど、オンラインでは3回ほど注文しているといった、新しい行きつけのスタイルが生まれたらうれしい」と溝端は話す。どちらにも偏らないことで、客もまたリアルとデジタルの垣根を超えて活用できる場がグラウンドニホンバシなのだ。
世界が広がるホットサンド、中身は地方と都市のハイパーローカルな食材
1階のホットサンドラボ ミリでは、創業から130年の歴史を持つ江戸前寿司屋、蛇の市本店の卵焼きを使った『蛇の市の玉子サンド』や、和歌山県みなべ町の梅農家、梅ボーイズの梅干しを使った『梅ボーイズのサバサンド』など、日本全国の地域特産やストーリーを持った食材と日本橋の老舗の名物商品などがコラボレーションしたホットサンドを、月替わりで提供している。
梅ボーイズの梅干しは、梅本来の味を生かした無添加の梅干しで、強烈な酸っぱさが特徴的な唯一無二の食材。再開発のため移転してしまった蛇の市本店の跡地に、ホットサンドラボ ミリが入居したというストーリー背景も胸を熱くさせる。
同店は、生産者や産地に寄り添ったセレクトショップとしても機能している。蛇の市本店の名残を残すカウンターと、かつては寿司ネタが並んでいたショーケースの中に、今は銀座のアンテナショップも顔負けの隠れた名品が並んでいる。おいしいの延長線上に、魅力的な商品を産んだ地域や日本橋をもっと好きになる仕掛けが施されているのも、同施設の特徴の一つである。
なかなか外出しづらい状況が続くため、今後はオンラインサイトをさらに充実させていくという。「2年間でこの施設は閉めてしまうが、その中で蓄積した多くの情報がアーカイブとなってオンラインではグラウンドニホンバシがその後も存在し続けていけたら」と、溝端は愉快そうに先々のことを語った。
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