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生理用ナプキンを無料で受け取れるシステム『オイテル(OiTr)』が実証テスト実験を経て、2021年8月、本格的にスタートを切った。春先から実証テストを行っていた三井ショッピングパークららぽーと富士見のほか、中野区役所や横浜市役所、中部国際空港セントレアに導入されており、企画を手がけたオイテル専務取事業本部長である飯﨑俊彦は、「最初の1年間で3000台を目指す」と語る。
『オイテル』とは
『オイテル』は女性トイレの個室内に設置。スマートフォンに専用アプリをダウンロードし、アプリを起動した状態でディスペンサー(本体機器)にかざすと、取り出し口から生理用ナプキンを無料で1枚取り出せる。現在は『エリス コンパクトガード 多い昼用(羽付き)』を使用しているが、今後、 種類を増やしていく予定もあるそうだ。
入手できる枚数には制限があり、2回目以降は初回の2時間後から利用でき、25日間で7個が上限となる。スマートフォンとディスペンサーを使うことで大量に持ち出されることを避けるという意図も込められており、今後は、利用者の声を聞きつつブラッシュアップしていくそうだ。
ディスペンサーには無声音の広告動画が流れる。これは、便座に座ることで人をセンサーが感知し、ディスペンサーを使う人だけではなく、個室を利用する人全員に流れるもので、生理用ナプキンなどの経費はこの広告収入からまかなわれる。
担当者の思いと立ち上げのきっかけ
『オイテル』立ち上げのきっかけは、「ビジネスで社会課題を解決したい」という思いだった。待機児童や少子高齢化、保険制度などさまざまな社会課題のなかで どこから着手しようと考えた末、「ジェンダーギャップという不均衡の是正」「女性特有の健康問題における様々な負担の解決」を視野に動き出す。そんななか、飯﨑はインターネット上で「トイレットペーパーは常備されているのに、なぜ生理用ナプキンはされてないのか」というある女性の声を目にする。このことをきっかに、社会課題の解決となる事業にフォーカスすることができる同プロジェクトを始動。
こうして、生理にともなうさまざまな負担を軽減することで、生理のある人たちのQOLの向上につながればとサービスをスタートさせた。
経済的な問題解決のためだけではない
「金銭的な問題で生理用品が買えないということを解決するためのサービスだと思われがちですが、決してそうではありません。日本では『生理の貧困』を経済的困窮と結びつけてしまう傾向が強いですが、むしろ生理に伴う心や体の負担を軽減したいという考えの方が強かった。ナプキンがトイレットペーパーのように個室にあることで、ずいぶん軽減されるのではないかと考えました」
ナプキンを無料で提供することは、経済的な貧困の解決にもつながるが、そう単純にとらえられるものでもないようだ。実際、ららぽーと富士見での実証段階では、『必要でしたので使わせていただきましたが、生理の貧困ではない
「オイテルは必要なすべての人に行き届くサービスでありたいと考
反響は上々で、全国から多くの問い合わせがあり、生産台数や設置が追い付いていない状態だ。なお、今後はスマートフォンを使わないディスペンサーの開発も視野にあるという。
テキスト:長谷川あや
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