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2023年春、新作歌舞伎「ファイナルファンタジーX」が開幕

尾上菊之助、中村獅童ら会見の様子をレポート

テキスト:
Ayako Takahashi
歌舞伎「ファイナルファンタジー」
左から北瀬佳範、中村橋之助、中村梅枝、尾上松也、尾上菊之助、中村獅童、坂東彦三郎、中村米吉、上村吉太朗(Photo:阿部章仁)
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歌舞伎俳優、尾上菊之助の発案で生まれる新作歌舞伎「ファイナルファンタジーX」は、名作ゲームの歌舞伎化という初めての試みだ。2023年3月の公演に先駆けて、2022年11月29日に製作発表会見が行われた。

歌舞伎「ファイナルファンタジー」
Photo: Keisuke Tanigawa

ゲーム「ファイナルファンタジーX」の世界が歌舞伎に

脚本は連続テレビ小説「おちょやん」や「家政夫のミタゾノ」などのドラマを手がけた八津弘幸。企画・演出・出演(主人公ティーダ)を歌舞伎俳優の尾上菊之助が務め、共同演出に「ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー」や B'zのドームツアーなどを担当した金谷かほり。菊之助は、新型コロナウイルスによる2020年のステイホーム期間に企画を構想したという。

歌舞伎「ファイナルファンタジー」
尾上菊之助(Photo: 阿部章仁)

ティーダ役:尾上菊之助

「2020年3月、歌舞伎公演がなくなり先行きが見えない中、久々に家族でゲームをしようとした時、心に残った作品をやりたいと考えて思い出したのが、2001年発売のファイナルファンタジーXでした。登場人物がフルボイスで、ゲームではなく映画を見ているような感覚があって。それ以前のゲームは自分が主人公の視点でプレイしていましたが、キャラクターに感情移入してキャラクターの目線でゲームをして、非常に感動したことを覚えています。

バラバラだった登場人物たちの心が物語が進む中で通い合い、一人が皆のため、皆が一人のため、互いを思い合いながらシンという強大な敵に向き合う姿は、コロナ禍であり、戦争も起きている悲しい状況の今、強いメッセージとして届けられるのではないかと考え企画いたしました。私自身がこの作品に救われたように、少しでも皆さまに元気を届けられたらと思います」

その菊之助からの熱いオファーを受けた歌舞伎俳優達が、出演を決めた。

歌舞伎「ファイナルファンタジー」
中村獅童(Photo: 阿部章仁)

アーロン役:中村獅童

「菊之助さんから電話でオファーを受けた時は、菊之助さんと共演させていただくこと自体、約10年ぶりくらいだったのでびっくりしました。私自身も家にこもって、これからの自分や歌舞伎界のことを考えていた時でしたから、菊之助さんの熱い気持ちと考えていることに対してうれしかったですね。

衣装合わせでも、お互いに意見を出し合いながら作らせていただいたので、袖を通した時はテンションが上がりました。何より新しい舞台を菊之助さんと作れるのがうれしい。菊之助さんの気持ちに応えられるよう一生懸命務めさせていただきます」

歌舞伎「ファイナルファンタジー」
尾上松也(Photo: 阿部章仁)

シーモア役:尾上松也

「菊之助のお兄様からお話を聞いたときは非常に驚きましたし、同時にコロナ禍でも常に前に進もうとするお気持ちに感動しました。しかも大先輩であるお兄様から直々にお電話をいただいて光栄でしたし、微力ながら少しでもお力になれれば、と。お兄様の演出のもと、見たことのない歌舞伎体験をお届けしたいと思います。僕はこのゲームは5周くらいしていますが、今回、初めてルールばかり見てプレイしてみたら、新たな発見があって面白かったです。

また、衣装に袖を通してみて舞台へのボルテージが上がり、実際にどうなるか楽しみになりました」

歌舞伎「ファイナルファンタジー」
坂東彦三郎(Photo: 阿部章仁)

キマリ役:坂東彦三郎

「菊之助さんとは、育った環境、教わった教室、教科書……とずっと一緒で。新作歌舞伎や外部出演に誘ってくださったり、新春の国立劇場の歌舞伎では埋もれていた作品を復活させたりと、歌舞伎を再構築する姿は見てきたので、オファーをいただいた時は嬉しくて、二つ返事ならぬ『一つ返事』でお受けしました。ゲームをしない人間だったので今プレイしていますが、日本人が作ったので『侘び寂び』もある。勢いのある共演者の中でも負けず、菊之助さんのエネルギーにも負けずに務めたい」

歌舞伎「ファイナルファンタジー」
中村梅枝(Photo: 阿部章仁)

ルールー役:中村梅枝

「普段の歌舞伎で菊之助のお兄さんと年間の半分以上ご一緒しているので、こうやって新しいもののお誘いを受け、私もリアルタイムでファイナルファンタジーXをやっていたのでうれしく、原作ファンとしてお力添えできたらと考えています。ルールーは大人の女性で、和装でも色気のある姿となっています。世界中で愛されているゲームですので怖い思いもありますが、お兄さんを少しでも支えていけるように、また原作に敬意を持って演じさせていただきたいです」

歌舞伎「ファイナルファンタジー」
中村米吉(Photo: 阿部章仁)

ユウナ役:中村米吉

「お兄さんが作られた歌舞伎『風の谷のナウシカ』も初演からご一緒してそばで拝見していたので、また機会がいただけることが嬉しいです。お兄さんが演じるティーダと私が演じるユウナは、淡い恋心を抱き合いながら旅を進めます。男女での共演、それも恋をしていく仲は今まであまりないので楽しみです。

ダイエットしなければとも思っています(笑)。ユウナが魅力的な方が、より切なくより面白くなると思うので、まずはビジュアルの再現など少しでも原作に近づけるよう頑張りたいです」

歌舞伎「ファイナルファンタジー」
中村橋之助(Photo: 阿部章仁)

ワッカ役:中村橋之助

「僕も菊之助のお兄さんから直接お電話をいただいて、そのことがとても嬉しかったです。僕自身はファイナルファンタジーXをプレイしたことはなかったのですが、このゲームのファンの友人から『素晴らしいストーリーをこれから知ることが羨ましい』と言われました。衣装撮影の時には、菊之助のお兄さんが『いいよ、いいよ、ワッカだよ』と機嫌がよくなっていかれて僕も楽しくて。ワッカらしくのびのびと、お兄さんの力を借りながらしっかり演じたいです」

歌舞伎「ファイナルファンタジー」
上村吉太朗(Photo: 阿部章仁)

リュック役:上村吉太朗

「菊之助のお兄さんからお話をうかがった時は、世代ではなかったのでゲームをやったことがなかったのですが、すぐにググりまして。こんな格好できるかなと不安でしたが、ホットパンツみたいな足を出した、普段の歌舞伎とはちょっと違う衣装にしていただいて。人生で初めての金髪になるのも楽しみです。2001年に発表されたゲームですが、私が生まれたのも2001年。何かご縁を感じます。大切に務めたいです」

巨大スクリーンのある360度シアター「IHIステージアラウンド東京」で上演される本作。スクリーンを使いつつ、例えば水の表現は歌舞伎の本水ではない新たな表現を試みるなど、さまざまな挑戦がありそうだ。昼の部、夜の部合わせて9時間の公演だが、通し狂言のように舞踊もあり、各場に見どころのあるものとなるという。

キッチンカーが出店したり、チケット付きのホテル日帰りプランがあったりと、本編以外の楽しみどころも多そう。年の公演を楽しみにしたい。

取材・テキスト:高橋彩子

新作歌舞伎「ファイナルファンタジーX

日程:2023年3月4日(土)〜4月12日(水)※3月8日(水)、15日(水)、22日(水)、29日(水)、4月5日(水)は休演日
会場:「IHIステージアラウンド東京」(豊洲)
チケット:公式ウェブサイトで発売中

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