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世界中の奇妙な作品を集めた映画祭「Festa Incognita」が、2025年10月に「ユナイテッド・シネマ豊洲」で初開催される。主催は日本未公開の映画を紹介するZINE「Incognita」シリーズを手がけ、映画評論サークル「コーンビーム」の代表も務めるシメギウムだ。
上映が決定しているのはルーマニア、ナイジェリア、モロッコの3作品。シメギウムは「『Incognita』シリーズの制作中に気になった、日本人にはあまりなじみのない国の映画を上映する」と話す。
『Be My Cat: A Film for Anne』(ルーマニア、2015年)は、アン・ハサウェイの熱心なファンである監督が、彼女に認めてもらい自らの作品に出てほしいと映画を制作するファウンド・フッテージホラー。ファウンド・フッテージとは、他の作家が制作した映像(フッテージ)を作品の全体または一部に用いる手法を指す。
シメギウムに、参加者に感じてほしいことを尋ねると「本作は、ストレートに不快感です」と回答。「身の丈に合わない野望に向けて努力する主人公は、本作がファウンドフッテージなこともあって主観的に映るでしょう。しかし、彼の技術と才能のなさが我々視聴者を一歩引いた客観視へと引きはがしてくる。その視点で彼の奇行を観て、ドン引きしてほしいと思っています」と語る。
『Mami Wata』(ナイジェリア、2023年)は、現代社会と隔絶された西アフリカ海岸の村イユが舞台となる。水の女神「マミ・ワタ」を信仰する原住民族と技術革新の葛藤にフォーカスを当てたフォークスリラー(民俗的な怪異をモチーフにしたホラー映画)だ。同作は、第96回アカデミー賞国際長編映画賞(旧外国語映画賞)のナイジェリア代表作品にも選出された。
「同作からは映画の新ジャンルを感じていただければと思っています。日本の時代劇やアメリカの西部劇、インドのダンス映画など国固有の映画ジャンルは意外と多くありません。本作はナイジェリア映画いわゆる『ノリウッド』でしか作られない唯一無二の作風を感じさせます。モノクロの画面に映るハイコントラストな民族衣装と化粧、土着信仰をベースにしたストーリー、あらゆる点で今後のノリウッドを語るのに欠かせない作品であることを実感します」(シメギウム)
『The Sky Trembles and the Earth Is Afraid and the Two Eyes Are Not Brothers』(モロッコ、2015年)は、映画撮影ためモロッコを訪れるオリバー・ラクセ監督に密着するドキュメンタリー。……のはずが現実と映画、劇中劇が入れ替わり続けるという新感覚アヴァンギャルドホラーである。
「同作で感じてほしいのは混乱です。
最後に「いずれもあくまで私の感想です。
同映画祭開催に向け、クラウドファンディングプラットフォーム「MOTION GALLERY」で協力を呼びかけたところ、1週間程度で目標金額を達成。現在は第2回開催に向け、ストレッチゴールに挑戦中である。上映作品以外で交渉している作品が3作ほどあり、次回はそれらの作品を上映する意向だ。「ほかの作品にはない映画体験をしてほしい」という思いが根底にあり、視聴が苦痛を伴う(決してグロテスク過ぎる、退屈という意味ではない)、アバンギャルドな作品を持ち込む予定だという。
これまでに調達した資金は、映画館の貸切費用や字幕およびBlu-rayの制作費などに充てるという。支援者には映画祭のチケットや上映作品のBlu-ray、限定パンフレットを配布する。
映画は日本語字幕付きで上映し、Blu-rayも制作するので安心してほしい。どの作品も「日本上陸済みの映画とは違う、独自の体験を保証する傑作ばかりだ」とシメギウムは胸を張る。新たな世界の映画体験に今から期待が募る。
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