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劇作家の別役実（べつやく・みのる）による名作童話を下敷きにした音楽劇「空中ブランコのりのキキ」の制作が、「世田谷パブリックシアター」から発表された。演出・脚本を劇団「快快（ファイファイ）」のメンバーが、音楽をオオルタイチが担当するということで各方面から注目を集めている。
別役は、日本が世界に誇る演出家の鈴木忠志（すずき・ただし）とともに劇団「早稲田小劇場」を1966年に結成。サミュエル・ベケット流の不条理演劇を日本で確立させた第一人者だ。今なお繰り返し上演される戯曲の数々のほか、エッセーや童話なども数多く発表している。
本作では、構成と演出を野上絹代（のがみ・きぬよ）、脚本を北川陽子（きたがわ・ようこ）という、国際的に活躍する劇団「快快」の中核を担う2人が手がける。演劇という枠を融解させるような、斬新で現代的な表現で高い評価を獲得している快快だけに、別役作品をどのように再構成するのかにも期待が寄せられる。
国語の教科書にも取り入れられている「空中ブランコのりのキキ」は、唯一無二の「3回宙返り」でサーカスの人気を支える主人公のキキが、自らの人気が失墜することを不安に思い、命と引き換えにしてまでさらなる高みを目指す物語だ。周囲からの評価を通して得られるプライドやアイデンティティー、孤独といったテーマと関連付けられてきた。
同作のほかにも、同じくサーカスをモチーフに扱う作品や、「人殺し」のメニューを提供する店を舞台にした「丘の上の人殺しの家」など、別役ならではの不条理な作品を多数引用しながら、サーカスアクトなども取り入れた音楽劇として再構成されるという。音楽を担当するオオルタイチは、ソロ活動のほかバンド「ウリチパン郡」で知られているが、ダンサーの康本雅子（やすもと・まさこ）作品などでの舞台音楽にも定評がある。
出演は咲妃（さきひ）みゆ、松岡広大（まつおか・こうだい）など。宝塚歌劇雪組のトップ娘役時代には、相手役の早霧（さぎり）せいなとともに「平成のゴールデンコンビ」と呼ばれた咲妃は、退団後も精力的に活動している。2023年には、唐十郎（から・じゅうろう）の傑作戯曲「少女都市からの呼び声」のヒロイン役として好演したことも記憶に新しい。
音楽劇「空中ブランコのりのキキ」は、2024年8月に世田谷パブリックシアターと兵庫県の「アクリエひめじ」で上演される。世田谷パブリックシアターが新たにスタートさせる夏のアートフェスティバル「せたがやアートファーム」のメインプログラムということで、フェスティバルについても続報が待たれる。
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