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「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」の開催まであと10日。会場では、世界中からの来場者を迎える準備が着々と進められている。
敷地内には、海外・国内・民間など180を超えるパビリオンが建設されているが、「大阪・関西万博」の中心となるのが「シグネチャーパビリオン」だ。これは、「大屋根リング」の中心部に位置する8つの展示パビリオンの総称で、脚本家や生物学者など、各界を代表する8人のトッププロデューサーが主導する「シグネチャープロジェクト」によって構成されている。

同プロジェクトは、8人のプロデューサーたちが「いのち輝く未来社会のデザイン」という万博のテーマをもとに、それぞれの思想や哲学をパビリオンに反映させたもの。それぞれの視点から、来場者とともに考える場を創造する。
このほど、メディア向けに「シグネチャーパビリオン」の内部が公開された。ここでは、各パビリオンの魅力を紹介しよう。
各界のトップランナーたちの哲学を具現化
ロボット工学の最前線で研究・開発を続ける石黒浩がプロデュースするパビリオン「いのちの未来」では、AI・医療・環境技術の進化を予測し、50年後や1000年後に私たちが迎える未来の姿をストーリー仕立てで描く。

会場では、1970年の「日本万国博覧会」で話題となったロボット「デメ」のデザインを継承した最新型ロボットや、人間そっくりのアンドロイドが登場。テクノロジーの発展によって、人間の可能性がどこまで広がっていくのかを来場者に問いかける。

放送作家であり脚本家の小山薫堂が主導するパビリオン「EARTH MART」では、いのちを支える「食」に着目。スーパーマーケットを模した展示空間では、商品と出合う感覚で、「どれほどいのちを食べているか」に気付く仕掛けが施されている。

「対話」に焦点を当てるのは、映画監督の河瀬直美が手がけるパビリオン「Dialogue Theater –いのちのあかし–」だ。台本のない見知らぬ人同士の会話を通じて、恐れや分断の正体を浮かび上がらせ、相互理解への第一歩を促す。パビリオンの建築には、奈良と京都の廃校舎の一部が再利用されており、子ども時代の無邪気な交流を思い起こさせる。


データサイエンティストの宮田裕章率いるパビリオン「Better Co-Being」では、「豊かさとは、個人ではなく共創の中で生まれるもの」という考えのもと、多彩なアート作品が展示される。建築デザインは「金沢21世紀美術館」などを手がけたSANAAが担当。屋根や壁がなく、環境に呼応する建築と作品が混じり合い、新たな「共生のかたち」を提示する。


メディアアーティストの落合陽一が手がける「null2(ヌルヌル)」は、鏡面状の幕に覆われた建物全体が振動や伸縮によって歪む特徴的なパビリオンだ。建物の中では、鏡張りの空間に生成AIが作り出した万華鏡のような映像が映し出され、来場者を肩書き役割などの考え方から解放し、異世界へ連れ出す。

来場者が事前にアプリで自分の情報を登録しておくと、パビリオンの空間内に自分のアバターが現れ、対話できる仕組みも用意されている。リアルの自分とデジタルの自分が向き合う「合わせ鏡」のような体験を通して、自己の在り方を問い直す場となる。

そのほかにも、生物学者・福岡伸一が動的平衡論の視点から「生命とは何か」を問い直す「いのち動的平衡館」、アニメーション監督・河森正治による「いのちめぐる冒険」さらにはジャズピアニストであり数学者の中嶋さち子が手がける「いのちの遊び場くらげ館」など、多彩な各界のトップランナーたちの哲学が体験できる。

高度経済成長期真っただ中の1970年に開催された「日本万国博覧会」とは異なり、未来への漠然とした不安が漂っている現代。だからこそ、各界のプロデューサーが提示する未来のビジョンに触れ、新たな視点をインストールすることが求められている。その先に新たな希望が見出せるかもしれない。
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