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今なお長屋文化が残る、すみだ旧向島エリアを舞台にした街中芸術祭『すみだ向島EXPO』がスタートした。2020年の初開催時は、約2カ月間の会期中に約3000人が来場。今年は「隣人と粋でいなせな日」がテーマに、事前予約制で来場者を1日200人に限定して開催する。
舞台となる墨田区京島は、戦火を逃れた江戸の庶民の暮らしを引き継いだ戦前の長屋が数多く残るエリアだ。ここでは、開幕の前日に行われたプレスツアーで巡った、見どころを紹介しよう。
拠点となるのは「京島駅」。参加当日は京島駅で受付を行うと、参加者のみに配られる地図が入手できる。駅と言っても電車が通っているわけではない。かつては米屋だった建物を利用したもので、現在は『すみだ向島EXPO』の拠点となっている。
京島駅の増築部分の壁は、左官アーティストの村尾かずこがセメントモルタルで装飾を施した。芸術監督のヒロセガイから「外壁をどうにかしたい」と言われたのがきっかけで、「このエリアは家の前に植木を置く文化があり、皆さんそこに注ぐ情熱がすごいんです。それを見て歩くのがとても楽しくて、その文化を生かしたいと考えました」と語る。
サイドコアは、京島駅をはじめ「京島の古い建物を壊さずに、新しく活用されている」家屋の軒には陶器で作られた、20体の金色のネズミを置いた。これは、古い場所に新しい人が居付くことをネズミに例えているそうだ。
明治通り沿いの七軒長屋では、タノタイガが公開制作パフォーマンス『I’m printing.』を実施していた。これは参加者の肌の色をキャンバスに描くというもので、会期中は、近くにある地元で長年愛されている電気湯のロッカーに作品が展示される。
そのほかにも、演劇、ダンスを背景とする4人で構成するパフォーマンスプロジェクト、居間 theaterが展示を行う。今回のパンデミックをきっかけに人類が酒を手放したと仮定し、今から100年後、アルコールがなくなった世界における、酒の資料館を作り上げた。
写真家の北野謙は、シェアハウスの三軒長屋と稽古場に、過去と現在、未来をテーマにした部屋を創出。「現在」の部屋は、太陽から光が地球に到着する、8分19秒という時間をフィーチャーしたものとなっている。
ここで紹介したのは、出展作品のほんの一部。会期中は大小さまざまな作品展示、イベントが予定されている。
地図、あるいはスマートフォンを片手に下町を歩きながら鑑賞する『すみだ向島EXPO2021』のアート作品は、その多くが古い民家を利用。外観からは想像もつかないような前衛的なアートがあり、シンプルにアートを楽しむだけでなく、新しい発見と驚きがあるのも新鮮だ。街を歩くことはもちろん、靴を脱ぎ、またやや急な長屋の階段を上って鑑賞する展示も多いので、歩きやすい服装で訪れることを勧めたい。
『すみだ向島EXPO』は、2021年10月31日(日)まで開催。オンラインで事前にチケット(前売り2,500円、一般3,000円、学生応援価格1,000円、小・中学生500円)購入が必須。
テキスト:長谷川あや
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