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ダムタイプ初期作品を伝える貴重なカセットブック2作品がLPレコード化

7月8日までクラウドファンディング、返礼品にも貴重音源が

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Time Out Tokyo Editors
山中透・古橋悌二/ダムタイプ 初期音楽作品レコード化プロジェクト
画像提供:conatala
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世界的に活躍するアーティストグループ「ダムタイプ」の初期音楽作品について、レコード化するためのクラウドファンディング「山中透・古橋悌二/ダムタイプ 初期音楽作品レコード化プロジェクト」が、2024年7月8日(月)まで開催されている。2022年の「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」の日本館展示にも選出された、押しも押されもせぬグループの、初期の活動をうかがい知る貴重な音源となること必至だ。

東京都現代美術館」での「ダムタイプ|アクション+リフレクション」(2019〜2020年)や、「アーティゾン美術館」での「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」(2023年)など、昨今その活動が国内でも再注目されているダムタイプ。しかし、流動的なメンバー構成や、まとまった資料の少なさなどを理由に、初期作品についてこれまで多くは明らかにされてこなかった。

「劇団 座★カルマ」から「ダムタイプシアター」へ

高谷史郎や池田亮司らに代表されるスタイリッシュな映像とサウンドによる、ハイテクなインスタレーションやパフォーマンスの印象が強いダムタイプだが、生々しい肉体表現やエモーショナルな演出も多かったことは、代表作「S/N」の映像を観たことのある人なら知っていることだろう。

中心的メンバーだった故・古橋悌二(ふるはし・ていじ)がHIVキャリアであることを公表し制作された「S/N」は、セクシュアリティーをはじめとしたさまざまなアイデンティティーに関わる問題に取り組んだ意欲作。1994年から1996年にかけて世界17カ国で上演され、ダムタイプの名を国際的に知らしめることとなった。1995年に敗血症でこの世を去る古橋の、ダムタイプとしての遺作でもある。

京都市立芸術大学のメンバーを中心に構成されたダムタイプだが、そもそも古橋が大学に入学した1981年時点での団体名は「劇団 座★カルマ」。作品名にも「羽衣病棟」(1981年)、「玉姫殿菊の間への道」(1982年)、「ペコちゃんホラーショー」(1982年)など、アングラ演劇を想起させるような、今のダムタイプからは想像のつかないタイトルが並ぶ。

日本を代表する演出家の鈴木忠志が富山県の利賀村で開催している日本初の世界演劇祭「利賀フェスティバル」(現・SCOTサマーシーズン)で上演されたロバート・ウィルソン(Robert Wilson)の作品や、ローリー・アンダーソン(Laurie Anderson)の京都公演など、同時代の才能から刺激を受けながら、徐々にダムタイプらしい表現を洗練させていく。そして1984年、ついに「ダムタイプシアター」(現・ダムタイプ)へと改名する。

山中透・古橋悌二/ダムタイプ 初期音楽作品レコード化プロジェクト
画像提供:conatala

返礼品にはダムタイプ以前のバンド「R-STILL」の楽曲が

今回のプロジェクトでLPレコード化されるのは、まさにこの頃の作品「睡眠の計画 - Plan For Sleep」(1984年)と「庭園の黄昏 - Every Dog Has His Day」(1985年)のために制作されたカセットブックだ。優れたドラマーで編曲にも才能をふるった古橋とともに、音楽制作を担当しているのはミュージシャンの山中透。大学入学以前から音楽活動を通して面識のあった古橋が、山中をダムタイプに誘ったということらしい。

ダムタイプとしての活動以降も、アジアを代表する舞台芸術家のオン・ケンセン(Ong Keng Sen)作品でも数多く音楽を手がけるなど、国際的に活躍している山中。今回のクラウドファンディングに合わせて大阪で開催された企画展示「Dumb Type初期カセット・ブック レコード化プロジェクト メモラビリア展 Vol.2」では、音楽ライブも披露した。

クラウドファンディングの返礼品もまた注目に値する。12,000円以上のプランに付いてくる7インチレコードには、山中と古橋がダムタイプ以前に組んでいたバンド「R-STILL」の楽曲を2曲収録。これまた非常に貴重な音源だが、ダムタイプ初期の音楽作品を予感させる内容となっているそうだ。そのほか、トートバッグやTシャツなども返礼品として準備されている。

山中透・古橋悌二/ダムタイプ 初期音楽作品レコード化プロジェクト
画像提供:conatala

ダムタイプシアターとして新たな表現を確立させようという極めて重要な時期に、必要不可欠な役割を果たした山中と古橋の音楽。もう二度と生まれることのない、若い2人による先駆的な音楽作品を手にする貴重な機会を決して逃さないでほしい。

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