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アメリカのアーティスト、ダグ・エイケン(Doug Aitken)の展示『New Ocean: thaw』が、表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京(Espace Louis Vuitton Tokyo)で開催中だ。同展示はこれまで未公開のフォンダシオン ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton)の所蔵作品を、東京、ミュンヘン、ベネチア、北京、ソウルのエスパス ルイ・ヴィトンで展示する『Hors-les-murs(壁を越えて)』プログラムの一環であり、国際的なプロジェクトを通じて、より多くの人々に触れてもらう機会を提供することを目指しているという。
エイケンは、写真、彫刻、建築的介入から、映画、サウンド、ビデオ作品、インスタレーションまで多岐にわたる活動を展開してきた。その作品は人物像と風景を中心に据えながら、視覚などの知覚にとどまらず、ほぼ身体的ともいえる体験を提供するとも評される。
今回展示され没入型プロジェクション『New Ocean: thaw』は、アラスカの詩情あふれる広大な風景を提示しており、エスパス ルイ・ヴィトン東京のためにエイケン自身が再構成したインスタレーションだ。映像ではアラスカの氷河が溶け出し、水になって流れ出す様子が映し出され、同じ映像が、互いに向かい合うように配置されたスクリーンで左右逆方向に進行する。
一見すれば、この作品のテーマが気候変動、大災害、氷河融解などであることは明らかなのだが、作品の背景には、エイケンとも交流があるオラファー・エリアソンが中心となったプロジェクト『アイス・ウォッチ・ロンドン』が念頭に置かれているだろう。
このプロジェクトは、2018年ロンドンオリンピックの際に、グリーンランドのフィヨルドの海で採取した氷をロンドンのテートモダンなどの前に設置して、一般に公開したもの。多くの人々を氷を見るだけではなく、触ったり、近寄って耳を当てるなどさまざまな向き合い方をしていた。エイケンの作品でも、触ることこそできないが、巨大なモニターで鑑賞者を囲い、その視覚や聴覚をもって映像体験に引き込む点では『アイス・ウォッチ・ロンドン』と近い手法と言える。
向かい合う映像では、同じタイミングで二つのスクリーンに太陽が現れて、循環するかのように互い違いに行き来する様子は、日本人にとっては「生成流転」などさまざまな解釈の余地を残してもくれる。
会場には、エイケンへのインタビュー映像も放映。全編英語ではあるが、このアーティストの考えやこれまでの作品について理解する助けとなってくれるはずだ。
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