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恵比寿の「山種美術館」で、犬や猫をテーマとした展覧会「犬派?猫派?―俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで―」が2024年7月7日(日)まで開催中だ。
本展覧会は、「第1章 ワンダフルな犬」「第2章 にゃんともかわいい猫」「特集展示 トリは花鳥画」の3章構成で、犬と猫を中心とした作品に焦点を当てている。本記事では、必見の作品をいくつか紹介していきたい。
まず、会場冒頭では江戸時代の俵屋宗達や伊藤若冲、円山応挙、長沢芦雪(ながさわ・ろせつ)などの作品が来場者を出迎える。
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中でも「洋犬・遊女図屛風」は、17世紀の風俗画として貴重な作品で、本展覧会が初公開となる。当時の日本では珍しかった長毛の洋犬が描かれている。犬や人物がいる地面は、大ぶりで直線的な幾何学模様。金地に雲霞(うんか)がたなびく背景や遊女の衣装、禿(かむろ)が使うすずり箱の蒔絵(まきえ)などを描く繊細な筆致と好対照をなす。
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琳派の祖、俵屋宗達「犬図」は、振り返る子犬を琳派特有のたらし込みの技法を使って描く。愛らしい表情にも見えるが、賛によれば、犬にも仏性があるかないかという仏教的なコンテクストの中で描かれているという。
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山種美術館が誇る名品、竹内栖鳳の「班猫(はんみょう)」も外せない。この作品は、栖鳳が沼津の八百屋の猫を見て、中国の皇帝、徽宗(きそう)作とされる「猫図」の猫になぞらえて、その猫を引き取って制作したという。
前足には白を重ねてふっくらとした前足の手触りを出しており、毛並みの良さが際立つ。近寄って見ると目には金を刷(は)いている。
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モデルとされる猫の写真も現存しており、「班猫」そっくりの、きれいな目をして大切にされた猫であったのが伝わってくる。なお、館内は撮影禁止だが、「班猫」と長沢芦雪「菊花子犬図」は撮影が可能だ。
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猫でもう一点見ておきたいのは、小林古径「猫」。一見すると毛並みのいい猫だが、よく見ると人間のような目をしている。毛並みをあまり描くことなく、絵の具を塗り重ねて胸毛のふっくらした様子を表現している。
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これまで観てきた作品は、動物を見て愛でる観点から描いているが、歌川国芳「山海愛度図会(めでたいつゑ) 七 ヲゝいたい 越中滑川大蛸」は少し見方が違う。猫になめられた時のザラザラした、痛気持ちいい感触を表現している。
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ほかにも、初公開となる菱田春草「柏ニ小鳥」のほか、山口晃や小針あすかなど現代の作家の作品も展示されている。作家と猫、犬とのエピソードなども紹介されているので、併せて読んでみてほしい。
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美術館に併設する「Cafe椿」では、青山の老舗「菊屋」が作品にちなんで製造した5種類の和菓子が味わえる。芦雪「菊花子犬図」にちなんだ和菓子「菊と子犬」は、犬の足跡も付いているなど凝っている。
また、本展覧会に合わせて「ユニクロ恵比寿店」限定で、本展覧会とコラボレーションしたTシャツやトートバッグを販売している。美術館の帰り道に寄ってみては。
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なお会期中は、イベントや一部展示替えが予定されている。詳細は公式ウェブサイトを確認してほしい。
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