ニュース

「デザイナートトーキョー2023」が開幕、5の見どころを紹介

テーマは「Sparks ~思考の解放~」、過去最大の108展示83会場で

Naomi
テキスト:
Naomi
ライター
DESIGNART 2023
Photo:Kisa Toyoshima「ASIA CREATIVE RELATION」展示風景
広告

東京の街がミュージアムになる、秋の恒例イベント「DESIGNART TOKYO」が開幕した。世界中からデザインやアート、ファッション、フードなどさまざまなジャンルの才能が集結し、108もの展示を実施。7年目となる今年は青山や表参道、渋谷、六本木、広尾、銀座、東京など、都内のさまざまな会場で2023年10月29日(日)まで開催する。

DESIGNART TOKYO
Photo:Kisa ToyoshimaDESIGNART TOKYO

 今年のテーマは「Sparks ~思考の解放~」だ。開幕に先立って行われたオープニングセレモニーでは、3つの日本語訳「きらめき」「ひらめき」「ときめき」を楽しんでほしいという想いが込められていることが紹介された。本記事では注目の展示など、見どころを紹介する。

DESIGNART 2023
Photo:Kisa Toyoshima「DESIGNART TOKYO 2023」オープニングセレモニーの様子

1. 最新のクリエーティブを堪能する。「DESIGNART GALLERY

会場:エスコルテ青山 (東京都港区北青山2-7-15)

オフィシャル会場のひとつ、外苑前駅すぐのエスコルテ青山では、展覧会「DESIGNART GALLERY」を開催。空間デザインには進藤篤を起用し、コロナ禍で大量に消費され、その9割が焼却処分されているというアクリル板を再利用したインスタレーションが空間を彩る。

DESIGNART 2023
Photo:Kisa Toyoshima展示風景

会場では、デンマークの家具ブランド「ムート(Muuto)」の魅⼒を存分に味わえる東京初のポップアップストアを中⼼に、国内外から集まった注目のクリエーターの最新のクリエーティブを楽しめる。

灯りの質にこだわった日本のポータブル照明メーカー「アンビエンテック(Ambientec)」は、会場内に直営ギャラリーを再現。既存のコレクションやミラノサローネで発表した新作を国内初披露するほか、デザイナーの板坂諭が手がけた、淡く優しい輝きを放つ風船のようなガラス製のランタンによるインスタレーションも美しい。

DESIGNART 2023
Photo:Kisa Toyoshimah220430「Ballon Iantern」展示風景

柔らかい色合いで目を引いたのは、竹とサトウキビで作られた環境に優しい紙の食器「WASARA」と「マルニ木工」の展示。菓子研究家の福田里香がアートディレクションを担当し、WASARAを大輪のマグノリアに見立てた花瓶や、蝶に見立てたモビール、思わず手にとりそうになるスイーツのような積み木が、ダイニングテーブルを華やかに演出していた。

DESIGNART
Photo:Kisa Toyoshima「WASARA」 展示風景

また、国内最高峰の技術を持った伝統工芸の職人による、エクスクルーシブでモダンなプロダクトを世界へ発信するブランド「編阿弥(あむあみ)」は、石英ガラスに漆や箔を合わせたプレートや、シェードなどに絹を用いたランプ、手すき和紙で仕立てた五輪塔など、豊かな物語のある品々を展示している。

2. 未来のスターデザイナーが競演。「「ASIA CREATIVE RELATION」Powered by THE LIONS

会場:ワールド北青山ビル

同じくワールド北青山ビルで行われているのが「ASIA CREATIVE RELATION」だ。全面ガラスのファサードと天井高の会場を一変させたのは、建築家の石田健太郎。多くの美術空間デザインを手がけてきた石田ならではの演出とともに必見なのが、時代の先を行くテーマで毎年注目を集めるオフィシャルエキシビションである。

DESIGNART 2023
Photo:Kisa Toyoshima「ASIA CREATIVE RELATION Powered by THE LIONS」 展示風景

今年はゲストキュレーターに、アジア太平洋地域のデザインに特化したメディア「Design Anthology」の編集長スージー・アネッタ(Suzy Annetta)を起用。韓国、中国、台湾、そして日本から、注目のクリエーターらが選ばれ、独創性の高い家具やアート作品を展示している。

DESIGNART 2023
Photo:Kisa Toyoshima輸送中に破損した製品をアップサイクルしたAtMa「J39.5」
DESIGNART 2023
Photo:Kisa ToyoshimaShizuka Tatsuno「sky」

3. 繊細な作品群を眺める。

会場:ティアーズ ギャラリー

表参道から路地を一本入った静かな通りにたたずむ「ティアーズギャラリー(TIERS GALLERY)」では、世界中からエントリーが殺到するコンペティション「UNDER 30」に選出されたガラ・エスペル(Gala Espel)とSo Tanakaをはじめ、注目のクリエーター4組が展示を行っている。

DESIGNART 2023
Photo:Kisa Toyoshimaティアーズギャラリー

パリと東京を拠点に活動するフランスの建築家 ガラ・エスペルの「Archaeology of the Future」は、考古学の視点で未来から今の時代の事物を見たらどうなるか、というSF的なテーマのもと、考古学用のスキャニング技術と、熟練の職人による繊細な表現が掛け合わされたプロダクトだ。

DESIGNART 2023
Photo:Kisa Toyoshimaガラ・エスペル「Archaeology of the Future」

デザイナーSo Tanakaの「vnsh」は、「周囲を照らし、⾃らも光の中に消えていく」という発想のもとに考案された照明。高度な金属加工技術によって生まれたプロダクトは、近未来的でありながら温かみもあり、ミニマルなギャラリーの空間にもしっくりと馴染んでいる。

DESIGNART 2023
Photo:Kisa ToyoshimaSo Tanaka「vnsh」
DESIGNART 2023
Photo:Kisa Toyoshima北條英と前田怜右馬の作品も展示されている

ギャラリーの最上階にあるバルコニーでは、茶人として活動する小澤雅都が、建築に用いられたワイヤーのファサードを裏見の滝に見立て、一服の茶を点てて鑑賞者をもてなす。新たな茶道の形を模索する小澤は、古事記に著されている古代日本的な精神性と自然のあり方を表現。表参道にいることを忘れてしまいそうな空間だ。

DESIGNART 2023
Photo:Kisa Toyoshima小澤雅都「自然台-SHIZENTAI-」

4. 期間中に開催されている注目のアート展示

会期中、各地のギャラリーやブランドショップなどでは、さまざまな注目展示が実施される。

インテリアでは、フィンランドの「アルテック」が、イタリアのデザインスタジオ「フォルマファンタズマ」と開発した、新たな木材選定基準「Wild Birch」を用いた特別モデルと新定番モデルの「スツール 60」を東京ストアで展示販売。このスツールは、1933年にアルヴァ・アアルトがデザインを発表してから今年で90周年を迎える。特別モデルはシリアルナンバー入りの貴重なものだ。

アルテック東京ストア
Photo:Kisa Toyoshimaアルテック

GYRE」4階では、空間の総合プロデュースを手がける乃村工藝社が「SCRAPTURE (SCRAP MATERIAL UPCYCLE PROJECT)」を展示。それまで廃棄してきた建材や内装素材に着目。それらを粉砕加工し、再生ビニールを使用した透明なソファに封入・補完した家具だ。

DESIGNART 2023
Photo:Kisa Toyoshima乃村工藝社「SCRAPTURE (SCRAP MATERIAL UPCYCLE PROJECT)」
DESIGNART 2023
Photo:Kisa Toyoshima乃村工藝社「SCRAPTURE(SCRAP MATERIAL UPCYCLE PROJECT)」

素材によって印象が変わり、デザインとしてもユニークな取り組みである一方で、日本では毎日100万トンもの産業廃棄物が捨てられているという、途方もない現実から生まれたプロジェクトでもある。素材としてアップサイクルするのか、ただのごみにしてしまうのか、日常で何かできることを考えたくなる展示だろう。

そのほか、関連展示として40年のクリエーションをたどる「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」や、全4章で構成された日本絵画を堪能できる「激動の時代 幕末明治の絵師たち」なども開催中。

表参道「エスパス ルイ・ヴィトン東京」で実施中の「ケリス・ウィン・エヴァンス「L>espace)(...」」展では、10月27日(金)・28日(土) にDESIGNART TOKYO主催のワークショップも実施予定だ。

5. 東京の伝統と革新を感じる。

会場:東京駅周辺

今年から新たに開催場所としてエリアを拡大した東京駅周辺(丸の内、京橋、八重洲、日本橋など)では、「ミッドタウン八重洲」や兜町のホテル「K5」、点在するギャラリーなど、約10の会場で多彩な展示を行う。

ソノ アイダ#新有楽町
Photo:Kisa Toyoshima「いつものソノ アイダ」展

再開発にともない閉館する新有楽町ビル1階では、実験的な企画展を開催してきた「ソノ アイダ#新有楽町」で、最終企画展を開催中だ。約2年にわたり同スペ―スで制作活動を行ったアーティストらの作品を展示するほか、マイケル・ホー(Michael Rikio Ming Hee Ho)のドローイングや、Hogaleeらの滞在制作スペースも展開。残り少ないアートプロジェクトの動向を目撃できる、最後のチャンスを楽しんでほしい。

ソノ アイダ#新有楽町
Photo:Kisa Toyoshima「いつものソノ アイダ」展 マイケル・ホー

さまざまなデザインを中心としたアートの魅力を楽しめる「DESIGNART TOKYO 2023」の会期は10月29日(日)までだ。

関連記事

「新宿御苑」で紅葉ライトアップ、アートな提灯や秋の味覚が満載

富ヶ谷が「世界で最もクールな街」のトップ10に選出

秋の夜長にしたい12のこと

京都の地下に広がる大音響空間でアンビエントに没入、AMBIENT KYOTOが開幕

新たな体験とコンテンツの発信拠点「TOKYO NODE」がオープン

東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

最新ニュース

    広告