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田町駅から徒歩7分ほどの全面ガラス張りの店に着くと、店主の下村祐太が爽やかな笑顔で迎え入れてくれた。ここ「咖哩(カリー)アンダーソン」は、代官山で2年間の間借り営業を経て2023年4月24日、三田・田町エリアに実店舗をオープンしたカレー専門店である。
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同店のカレーはコンブ、カツオ、煮干しからだしを取り、一晩寝かせた特製の和風だしと20種類以上のスパイスを掛け合わせているのが特徴的だ。看板メニューの「アンダーソンチキンカレー」(1,100円、以下全て税込み)は、特製鶏ガラスープと和風だしをベースに八丁味噌を加えることにより、コクのある濃厚なうまみが楽しめるチキンカレーだ。そのほか、週替わりのキーマカレーと、季節のカレーの3種類を用意。2種、3種のあいがけも食べられる。
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下村は、間借りを始める前にサービス業に9年間従事していた経歴を持つ。その間にも食の知見を広めるために、高級と呼ばれるような和食の料理店を食べ歩いていたという。その経験から日本人の舌に合う和だしや食材が多くの人に受け入れられることを確信し、インドでもスリランカでもない、「日本人による日本人のためのカレー」を作り始めた。
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カレーに合わせる米は、新潟県の「こしいぶき」を使用。ハリのある粒感を持っているので、そこに麦、アワ、キビ、白ゴマ、アマランサスを配合し、程よい乾きとプチプチとした食感を加えている。「日本人のためのカレー」という構想の中で、日本米にこだわり、バスマティライスのような乾いた質感を持った日本米を探し求めてさまざまな米問屋を巡り、ついに出合った理想の品種だという。
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この米が本当に美味。手間ひまをかけた副菜や好みで加えるトッピング、そして和だしをベースとした3種のカレーは黄金比のようなバランスになっている。
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カウンター7席のみという小さな店だが、オープン初日から行列が途絶えぬ人気ぶりで、120食ほどのカレーは連日売り切れが続いているという。これは間借り営業の頃とは違う大きな変化だ。以前は自宅で調理したカレーを運ぶため、20食ほどが限界だった。現在は、店の大きな鍋で作れるので、営業時間も長くなり、より多くの客へ提供できる。
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トッピングにも注目だ。定番の「スパイス半熟卵」(100円)に加えて、新たに「きりざい」(150円)と「かしわ天」(300円)が登場。「きりざい」は納豆と漬物を混ぜ合わせた新潟県魚沼の郷土料理で、下村の作る和風だしのスパイスカレーと親和性が高い一品である。
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さらに面白いのが、かしわ天だ。「カレーといえばカツと初めは考えていたのですが、和風だしを使う『咖哩アンダーソンらしさ』を考えた時に天ぷらだとひらめいたんです」と下村は笑顔で語る。
ふっくらとした大きなささみは、口の中でホクホクとした食感とふわっと広がるうまみがたまらない。衣の香ばしさがカレーのおいしさをブーストさせてくれる。
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開店と同時に7席のカウンターはすぐに客で埋まった。カウンター越しに目の前で盛り付けられていくライブ感も楽しく、提供までの時間は速い。
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新登場したスペシャルティコーヒーもテイクアウトできるので、食後に飲んでみよう。これもカレーに合わせた一杯であることは、もはや説明するまでもない。下村の経験から実現した絶品カレーをぜひ食べてみてほしい。
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ライター:高木それと