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清澄白河に、クラフト精神あふれるノンアルコール飲料の製造・充填(てん)を行う都市型のボトリング工場「カンパニー(CAN-PANY)」が、2023年5月9日に開業した。のどかな住宅街にある白壁と開放的なガラス窓が特徴のこの工場は、千葉県大多喜町にあるブランデー蒸留所「ミトサヤ(mitosaya)」の新ブランドの拠点だ。
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ミトサヤは緑の隠れ家のような温室と庭園を持ち、そこで栽培した約500種類のハーブや果樹のほか、全国の信頼できるパートナーたちが育む果物などを使用した蒸留酒を製造。植物への情熱的な愛と深い知見をもとに現代的な再解釈によって生み出された数々の蒸留酒は、日本全国はもちろん外国にも多くのファンがいる。
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カンパニーでは、そんなミトサヤが栽培した植物やノウハウを生かした新しいノンアルコール飲料を製造している。「GINGER SODA」シリーズといったオリジナルの缶ボトル商品のほか、OEMやコラボレーション商品などの開発・充填も行う。
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出来たてのドリンクを味わえるスタンディングバー
工場内には「ドリンクバー」が併設されており、透明のプラスチックカーテンの向こうで充填している様子を眺めながら、出来たてのドリンクを味わうこともできる。
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その場で楽しめるメニューは、3種類程度を週替わりで展開。取材時は新作の山椒とレモンのドリンク「SANSHO ZEST」(550円、以下全て税込み)、アーユルヴェーダの代表的なスパイスであるアジョワンと、ニゲラという花の種であるカロンジを使った「OUR TONIC」(550円)と、クラフトコーラの代名詞「伊良コーラ」とコラボレーションし、ミトサヤの蒸留過程で発生する蒸留粕(もろみ)を使ったコーラ(660円)が並んでいた。
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「SANSHO ZEST」には、ミトサヤで採れたタイムの仲間をガーニッシュとして浮かべる心にくい演出も。甘さ控えめで爽やかなレモンドリンクの口当たりに、ピリリとした青山椒の余韻がふくらむ。レモンの果皮を煮出したシロップを使っており、ほのかな青苦さに自然の恵みを感じる。
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オリジナル商品のレシピは、ライターながら個人蒸留までもこなすというJUNERAYが全て開発。食事と一緒に楽しめるノンアルコールドリンクを意識し、酒にあるようなボディと余韻があるテイストを目指したという。いずれも斬新なハーブやスパイス使いで、味わったことがない新ドリンクばかりである。
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このほかオリジナル商品は、高知県・刈谷農園の有機栽培ショウガとミトサヤで採れた秋ウコンをベースにレッドチリ、花椒(ホアジャオ)といったスパイシーさが特徴的な「秋のスパイスのジンジャーソーダ」と、春ウコンを使用した「春の花のジンジャーソーダ」もリリースしている。今後は月に1、2品程度のペースで新商品を製造していくそうだ。自社商品をはじめ、コラボレーションメニューは同工場で購入できる。
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「みんなの充填所を作りたい」という思いから始まった小ロットのボトリング工場
開業から1カ月ながら、OEMなどの問い合わせは50件以上入っているそう。流通に適した缶ボトルの小ロット生産を請け負える工場は全国でも貴重なためだそう。「反響の大きさに驚いています」と、同社のプロジェクトマネジャーを務める佐伯智子は語る。
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「工場見学をしたいと遠方から訪れてくれる人も少なくありません。産地の植物や果樹などを紹介するために、加工品として商品化したい、自家製のシロップ(ジンジャーなど)を炭酸飲料として販売したい、といったご要望もあります」
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希望があれば、レシピ開発やラベルデザイン、生産農家の紹介までしてくれるというのだから、引く手あまたなのもうなずける。同工場発足の背景には「みんなの充填所になれば」という思いがあり、個人からメーカー、缶から瓶まで、できるものには対応していくという。気になる人はぜひ相談してみよう。
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「CAN-PANYという名前は『充填する仲間』という意味の造語なんです。ボトル製品を作るのはもちろん、ここで飲んでもらうことで、仲間になって、一緒に楽しんでほしいです」と佐伯は来客への思いを語る。
清澄白河のこの小さな工場から、ノンアルコールドリンクという選択肢を生活に取り入れてみては。
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『カンパニー』
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