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フランスの三つ星レストランであり、2019年に「世界のベストレストラン50」1位となった「ミラズール(Mirazur)」のマウロ・コラグレコ(Mauro Colagreco)による「スィークル(CYCLE)」が2023年10月27日、大手町にオープンした。
生物多様性のためのユネスコ親善大使に初めて指名されたシェフであるコラグレコが目指すのは循環型ガストロノミーだ。スィークルでも生命の循環をテーマに、イノベーティブなコース料理を提供する。
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まずサーブされるのは、その日のメニューに使用される野菜の皮、茎などからだしを取り、ユズやキンモクセイなど季節の香りを添えた「ウェルカムブイヨン」だ。廃棄されるはずだった素材を使っており、「食品ロスについて見つめ直そう」というメッセージが込められている。
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前菜は「種のライフスタイル」をテーマにした4皿。根=誕生、葉=成長、花=再生、種子=再誕生というように、それぞれのテーマをビジュアル化したプレゼンテーションに胸がときめく。例えば「花」は菊の花のピクルスをあしらったあぶりしめサバとリンゴのタルト、「種子」は甘くない栗のフィナンシェなど、テーマと素材がリンクしているのも謎解きのようで、楽しい。
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その後も、煮詰めたミカンやニンジンのジュースを合わせたソースで、生ウニやウニのパンナコッタを味わう、ニンジンが主役の一皿といった、素材そのものの力を引き出したピュアでアーティスティックな料理が続く。
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ムールやバイ貝、オキシジミなどさまざまな貝のうまみと旬のセリを合わせたエマルジョンも色鮮やかだ。ノンアルコールのペアリングで提供された抹茶のモクテルも、ニンジンの皮を活用するなど「循環」のアイデアが光っていた。
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メイン料理のタイトルは「薔薇」。バラの香りを楽しむための肉料理で、薪(まき)で焼き、わらでいぶしたエゾシカと、バラ科であるリンゴ、バラの花びらやジェル、パウダーなどあらゆる組み合わせで味わう趣向だ。意外性のある組み合わせや調理法により、素材そのものの力を引き出している。
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華やかなデザート後のミニャルディーズ(小菓子)も同じく根、葉、花、種子の4皿。マリーゴールドや金木犀の小さなブーケやピーナツを入れた味噌のキャラメルなど、口に入れるのが惜しいほど繊細で、フォトジェニックである。
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サステナブルな食をエンターテインメントに進化させた劇場型レストランとも呼ぶべきか。それぞれの料理や厳選されたドリンクに、メッセージ性があり、生命の循環について学ぶきっかけとなる。
旬の野菜は、千葉にあるエディブルフラワーとハーブ農場の苗目で栽培したものを主に使用。フランスのミラズール同様、近隣の生産者と連携することにより、土壌を守る再生農法や、古来種の利用などにも積極的に取り組む。
料金は、前菜、料理5品、デザート2皿、小菓子のコースが2万6,400円、料理6品の場合は3万5,200円(ともに税込み)。自然派ワインのペアリングのほか、茶やモクテルなどノンアルオールのペアリングも展開する。
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スィークルのもう一つの魅力は、癒やしを感じる緑豊かな空間。皇居の森林が借景となっており、テラスにはミニ菜園もある。約2500年前の噴火で火山灰に埋もれ、掘り起こされた神代木のテーブル、本物の火山岩、実をつけたオリーブの古木など、天然素材に囲まれたインテリアに安らぎを感じるだろう。
スィークルのへッドシェフを務めるのはミラズールのスーシェフを務めていた宮本悠平。コラグレコの片腕としてフランスで根を張り、花開いた種を大手町の地で再誕生させていく。そのさらなる循環が楽しみだ。
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