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杉並区永福町は、吉祥寺にも渋谷にもアクセスが良く穏やかな住宅街だ。そんな町にフードクリエーターの五十嵐可菜が届ける、健全でヘルシーな中華料理店こと、中華可菜飯店がオープンした。
毎日食べたくなる中華料理を
1人で料理の提供を行うことやフードロスの観点から、メニューはコース(5,500円)のみ。コースの内容は1カ月サイクルで変わり、季節や旬の食材を楽しむことができる。五十嵐自身が脂っこい食べ物が苦手だったことから、料理はしつこさがなく、野菜もしっかり使われている。
写真は取材時である7月のコース料理の一部。このほかに一品料理やデザートも付く。中華可菜飯店が目指す「ヘルシー」とは油を使わないことではなく、使い方を大切にしたもの。八百屋や築地に出向き、きちんと選んだ食材をしっかりと丁寧に調理する。
前菜は3種で、エビのすり身揚げにはトウモロコシを使用。エビの風味に野菜の甘さがよく合う。青唐辛子、パクチー、ミントなどさまざまな食材を使用したトマトソースをトッピングした鶏肉は、さっぱりとした辛さに仕上がっている。コリンキーという生で食べられるカボチャは、ミョウガと山椒(さんしょう)のソースがきいて、夏バテの体に優しいスッキリとした味わい。
スペアリブの豆鼓(トーチ)蒸しは余分な脂っこさがなく、柔らかく煮込まれている。豆豉醤(トウチジャン)にパイナップルなどを入れてオリジナルの味付けをしたたれは、かゆにかけて食べるのもおすすめだ。
かゆはジャスミンライスを使用。鶏のスープでどろどろになるまで炊いて塩で味つけしたもので、『ジョーク』と呼ばれるタイ料理だ。豆鼓蒸しのたれを入れると、ほんのり感じるしょっぱさに甘さが加わり癖になる。
『五目焼売』はシイタケ、タケノコ、ダイズ、エビ、貝柱など、具材がたっぷりの看板メニュー。ひき肉を使わず1センチメートル角に手切りをし、肉肉しい食感を実現。丁寧に手間をかけ、野菜も多く入っている。中華可菜飯店の思いが詰まった一品だ。チルドした『五目焼売』は1,700円で、テイクアウトもできる。
上海の田舎町をイメージした店内に大きな円卓
建築デザイナーの喜多亮介が手掛けた店内は、上海の田舎町をイメージした赤茶色がベース。大きな円卓は、大阪で家具のオーダメイドを行うイエイ スタジオ(iei_studio)によるオリジナルテーブルだ。友人たちが塗装を手伝ったという手作りの温かさにあふれた壁は、居心地の良さを演出している。
カウンター席と大きな円卓が一つだけの贅沢な空間は、京都の中華料理店に影響を受けている。もともと空間デザインやグラフィックを学んできた五十嵐のこだわりが詰まった店内だ。
中華料理の伝統に自由な発想を
中華可菜飯店の店名には、伝統的な中華料理に「中華かな?」と自由な発想で問いかける、ちょっとした遊び心も隠れている。恩師の「料理は一番はかない芸術である」という言葉に影響を受けて、料理を始めたという五十嵐。オリジナリティーあふれる料理は、脂っこい、辛い、伝統的といった中華料理のイメージを大きく変えてくれる。
茶にこだわりを持った気軽な中華料理店が少ないことから、中国茶も豊富に取りそろえている。中国茶専門店のハー(Haa)から取り寄せた茶もぜひ楽しんでほしい。
また、不定期で弁当の販売やコラージュイベントなども開催。イベント情報や予約についてはInstagramで発信している。手間暇かけて丁寧に作られる料理は、体が喜ぶ優しい味わい。ゆったりとした時間が流れる永福町で、ここでしか味わえない新しい中華料理との出合いが待っている。
テキスト:阿部仁美
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