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※本記事はコロラド産CBDを含む炭酸飲料、ワイン、オイル、グミを製造するロンドンの企業、Goodraysの共同創業者であるクリス・ケリーによる寄稿。
2022年は、アルコールが独占している社交の場の飲み物としての地位が脅かされる年になるかもしれない。人々が世界的なパンデミックと未曽有の不安を経験し、健康が重要であると実感している中で、この「飲み物バトル」のリングに上がろうとしているニューカマーがいる。
その挑戦者とは、古くからある成分。それを含む植物は、人類によって栽培された最も初期の農作物の一つで、何千年もの間、我々に食物、繊維、医薬品を提供してきた。学名はCannabis Sativa L. で、一般的には「大麻草」などと呼ばれる。
大麻との出合い
今はロンドンでCBD(カンナビジオール)食品メーカーを経営している私が、この植物の力を理解するようになったのは、裏取引と煙の世界ではなく、2018年にデンマークのコペンハーゲン近郊にあるヨーロッパ最大の医療用大麻草栽培施設に足を踏み入れたことがきっかけ。その頃私は、世界最大級の医療用大麻生産者と協業する1年間のプロジェクトへ参加し、人体のエンドカンナビノイド・システム(ECS)と大麻草由来のカンナビノイドが人の健康と幸福にもたらすメリットに関する教育コンテンツを作成していた。
この経験で、私の大麻に対する視点は変化。ロンドンのサウスバンクで行われた『Cannabis Europa』というカンファレンスでのオウン・キーナンとの出会いへと発展した。彼は私の会社、Goodraysの共同創設者になってくれた人物だ。
アルコールのデメリットと大麻のメリット
キーナンは初期大麻産業におけるベテランである。私は彼と、大麻がアルコールに匹敵する有力商品となり、あらゆる社交の場で消費されるようになるというビジョンを共有。我々はすぐに、(大麻の)燃焼を前提とする提供は明らかに正しくなく、従うべきモデルがあるとすれば、アルコール飲料業界のそれであるという共通認識に至った。
アルコール飲料は、水分補給と社会的なつながりという人間の基本的な欲求を満たすことができる。製品をとりまく、魅力的なストーリーも多い。アルコールにはもちろん良い面もあるのだが、人間にとって薬効のない成分であるエチルアルコールを含んでいるのが欠点といえる。では何であれば、実際に健康にプラスで、気分も良くなれるのだろうか……。もちろんその答えは、大麻である。
ウルグアイ、カナダ、そしてアメリカの多くの州は、大麻の禁止を撤廃させることに成功し、医療効果に関しては世界中の政府が認めている。ヨーロッパではドイツ、マルタ、ルクセンブルクが、医療利用のためのプログラム開発と、それに続く大麻の娯楽的使用を許可する法律の制定に積極的だ。
世論の流れも変わり、アメリカの合法州では大麻に対する偏見がほぼ完全に消滅。わずか数年間で、パーティーでビールやワインを飲むようにCBDやTHC(テトラヒドロカンナビノール)のドリンクを飲んだり、食用大麻をつまんだりするのも普通になった。ちなみに、言う必要もないかもしれないが、大麻を摂取している人たちが夜の終わりに倒れたり、見知らぬ人に怒鳴ったりすることはほとんどない。
飲み物としての大麻
大麻草に含まれる最も一般的な化合物には、CBDとTHCの2つがある。THCは、医療以外の分野では依然として広く違法とされており、大麻が一般的に連想される精神的な「高揚感」とその後の「むかつき」の原因となるもの。一方、CBDは合法とされることがほとんどで、不安、痛み、炎症を緩和し、回復、気分、睡眠の質を向上させることができる非毒性化合物だ。
これらの理由から、CBDは大麻草を代表するメリットであり、今後大麻草が社会の本流や文化で受け入れられれるための大事なフックになると位置づけられている。リラックスできる機能的な大麻ドリンクをバーで注文したり、自宅で夕食をとりながらノンアルコールのCBDワインを飲むことは、酒の悪影響を受けずにリラックスしてくつろぎたい人にとって、すぐに日常生活の一部になるはずだ。
ここ1年で高級バーやレストランでは、メニューに「リラックス飲料」や「マインドフルネス飲料」のセクションが増え、主な食料品店も「機能性飲料」コーナーを開設してこのトレンドに乗ろうとしている。それに加えて、低アルコールもしくはノンアルコール飲料のブームという好機もある。この分野は、2021年の飲料業界の中で急成長。新ブランドの参入や大手アルコール飲料企業がベストセラーブランドのゼロパーセントバージョンに焦点を移していることを見ても、この勢いはまだ続くだろう。
Goodraysでは、心身の健康にポジティブな影響を与えるさまざまな薬草やハーブを使った飲み物が、社会的環境の中でコミュニティーとのつながりの力を輝かせるものだと考えている。アダプトゲンをベースにしたノンアルコールスピリッツから、キノコをベースにしたアルコールフリーのビールまで、数え切れないほどの素材を研究開発中だ。
まだ時間はかかるかもしれないが、バーで「どんな気分になりたい?」と聞かれることは、今後数年のうちに現実になるかもしれない。要求される「気分」のトップは「リラックスしてくつろぐ」
社交の場の主役に?
2021年から学んだことは、人は現実の世界でほかの人と一緒に過ごすことが好きだということ、そして(パブクイズがあろうとなかろうと)Zoomはパブに代わるものではない、ということだ。レストランやバー、音楽、アート、スポーツ、文化イベントなど、社交の場での体験は現代人にとって欠かせないものであり、幸福のための重要な要素でもある。新型コロナウイルスにより、その楽しさが絶たれてしまったが、空間を共有し、友人と会話し、見知らぬ人と交流することで、私たちは深い幸福感に到達することができるのである。
社交の場の復活とともに、2022年の「飲み」は、酔いよりも健康、リラックス、つながりを重視したものに進化する年になるかもしれない。
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